子供の発達障害は食事で改善できる?【専門管理栄養士監修】

わが子が発達障害と診断されたとき、又はその疑いがあるとわかったとき、「何としてでもできることをしたい!」と思うのが親心ですよね。

「療育施設での支援だけでは不安だし、なかなか思うような結果がでない・・・もっと家庭でできることはない?」

そんな親御さんに知ってほしいのが、お子さまの体の中から症状改善にアプローチする「食事療法」というもの。

この記事では、発達障害の食事療法について、様々な手法と検査方法、長く続けるためのコツなどをご紹介します。

<監修:発達障害専門の管理栄養士 小林浩子先生>

 

発達障害の子供向け「食事療法」4種類、内容と効果

「発達障害のための食事療法」とは、食事からのアプローチで「生きづらさ」を改善するための療法です。

基本的な考え方は、

  • 足りていない栄養素を足す
  • 良くない影響を与えているものを除去する

というもの。

適切な治療をすることで、その効果は発達障害だけにとどまらず、様々な疾患に有効とも言われています。

以下、代表的な4種類の食事療法について、詳しい内容をご紹介します。

1)グルテン・カゼインフリーダイエット

食生活の中からグルテン・カゼインを除去する方法です。

グルテンとは小麦などの穀物に多く含まれるタンパク質の一種、カゼインとは牛乳やチーズなどに含まれるタンパク質の一種です。

発達障害の子供たちの多くは腸内環境が悪いと言われています。グルテン・カゼインを除去することで腸内環境の改善を目指します。

パン

書籍『パンと牛乳は今すぐやめなさい!3週間で体が生まれ変わる』(葉子クリニック院長 内山葉子 著/マキノ出版)によると、期待できる効果は次のようなもの。

<子どもの場合>

  • 自傷行為がなくなる
  • 異常行動がなくなる
  • 朝までぐっすりと眠る
  • 癇癪を起こしにくくなる
  • 授業中に座っていられるようになる

<大人の場合>

  • 不定愁訴、自律神経失調症の改善
  • お腹の張り、便秘・下痢の改善
  • 肥満の解消、お腹周りの脂肪が減る
  • 婦人科系の病気、症状の改善
  • 気分の変動が落ち着く、うつの改善
  • 鼻の症状、花粉症の改善

2)糖質制限食事療法

食後に血糖値を急激に上昇させる糖質を制限(カット)する食事療法。

血糖値の急上昇や急降下は、体や心に影響を与えると言われています。

パン・白米・麺類・白砂糖などを控え、主食を取るなら未精製の穀物(玄米など)にします。

炭水化物

書籍『子どもの「困った」は食事で良くなる』(溝口 徹 著/青春出版社)によれば、子供には糖質制限で次のような効果が期待できるそうです。

  • しっかりとした筆圧で書ける
  • 漢字を覚えるのが早くなる
  • 落ち着きが出てくる
  • 帰宅後の態度が穏やかになる

また書籍『発達障害の治療の試み』(マリア・クリニック院長 柏崎良子 著/株式会社ヨーゼフ)では、急激な血糖値の上昇後、反動で低血糖状態になったときに引き起こされる心身の症状として、次のようなものを挙げています。

  • イライラする・癇癪・怒りっぽくなる
  • 衝動的・暴力的になる
  • 感情の抑制ができない(キレやすい)・パニックを起こしやすい
  • 不安や恐怖、焦りを強く感じる
  • 夜の不眠と日中(特に食後)の眠気
  • 頭痛

血糖値が安定すると、上記の症状も改善する可能性があるそうです。

3)アレルゲンフリー食事療法

フードアレルギー(食べたものに対して、体が反応するアレルギー)を調べ、反応の出るものを除去していく方法です。

フードアレルギーには、

  • すぐに反応のでる即時型
  • 食べてから数時間〜数週間して反応する遅延型

があります。

即時型の場合は、食べた直後に皮膚のかゆみや湿疹などの反応が表れるため見つけやすく、親御さんも意識して除去していることが多いのですが、遅延型アレルギーは気付かず摂取し続けていることがほとんどで、発達障害を含む様々な症状や疾患の原因になっていることがあります。(検査方法は後述します)

アレルゲンの除去による以下のような症状の改善例は書籍『アレルギーは「砂糖」をやめれば良くなる!』(溝口 徹 著/青春出版社)に紹介されています。

  • 花粉症や鼻炎
  • 不眠や疲労感
  • 頭痛
  • 内科系疾患
  • 落ち着きがない など

4)抗イースト食事療法

腸で発酵しやすい食品を除去する方法です。

腸内環境を荒らす原因の一つであるカンジダ菌の増殖。発達障害の子どもには、下痢・便秘・イライラ・多動・集中力の低下など、悪影響を及ぼします。

カンジダ菌を増やす食品(精製食品、人工甘味料・香料・保存料、チョコ、乳製品、イースト菌など)を除去し、豆類や玄米などを積極的に取ります。

 

改善が期待できる世界の食事療法

日本にも、世界にも、発達障害のために考案されたわけではなくとも、食事から心と体を整えていく療法はいくつもあります。

これらを完璧に取り入れるのはハードルが高いですが、「食事で心を整える」という視点は発達障害向けの食事療法と共通なので、知っておくと役立つことが多いでしょう。

自然療法

人間が本来持っている自然治癒力を高めることで健康な身体をサポートする療法です。

ハーブやアロマも自然療法の一つ。薬に頼らず、栄養指導やサプリメントで必要な栄養素を補う栄養療法も、自然療法の一種といえます。

マクロビオティック

玄米菜食をベースとし、陰陽の理論を取り入れた食事。

精製された砂糖は使わず、玄米や雑穀、全粒粉の小麦製品を主食とします。肉類・乳製品も基本的に使用しません。

食事療法というよりは、「一物全体」「身土不二」「陰陽調和」などの独自の理論を持ち、生活そのものを変えていくという思想的な一面もあります。

 

この他にも、アーユルヴェーダ、薬膳など、食事から体を整える手法は古くからたくさん存在します。しかし、すべてを完璧に取り入れようとすると、日々食事を作る親の労力ははかりしれず、食べるものがなくなってしまうでしょう。

なんでもかでも取り入れるのではなく、まずはお子さまにとって除去すべきもの、足らないものを正しく調べることが重要です。

原因と状態を知ることからスタート

いざ食事療法をやろう!と思っても、いったい何をどうスタートすればいいか、わからないですよね。

 

まずは、お子さまの体の状態を正しく知ることが、食事療法の最初の一歩となります。

お子さまの体の状態を知る方法はいくつかあります。

ポピュラーなのは次のような検査です。

1)毛髪検査

毛髪や爪を分析することで、体内にある必要な栄養素(カルシウム、マグネシウム、鉄など)の過不足と、有害重金属(水銀、ヒ素、鉛など)の残留を検査します。

採血などと違って痛みを伴わない検査のため、小さな子でも安心です。

検査機関はいくつかあり、ネットで気軽に頼めるものもありますが、種類や費用によって多少の誤差があります。

以下は、実際に都内のクリニックでお子さんの毛髪検査を行った親御さんから提供いただいたデータです。

毛髪サンプルを郵送すると結果と解説が送られてくるシステムで、費用は約12,000円とのこと。

 

■検査結果の一部(当時4歳・男の子)

検査結果

ビタミン・ミネラルや重金属類の数値に加え、「グルテン不耐」などの指数も示されています。

2)ペプチド検査

尿中の「グリアドーフィン」「カソモーフィン」の濃度を調べます。前述したカンジダ菌などの増殖により腸壁が損傷している場合、これらのペプチドが腸から血液中に入り、脳に到達することで、麻薬に似た症状を引き起こし、様々な不調に関係すると言われています。

濃度が高い場合は、グルテン・カゼインフリーで腸内環境を整え、必要な栄養素を食事やサプリメントで補給するなどの治療法になります。

こちらも医療機関での検査・治療をオススメします。

 

3)IgGフードアレルギー検査

「IgGフードアレルギー検査」は、数時間~数日かけてあらわれる遅延型アレルギーの原因を特定するため検査です。

こちらは血液検査が必要ですが、採取量はわずかで済みますので、通常のアレルギー検査で原因が分からない時は試してみるのもひとつの方法です。

クリニックまたはインターネットでサンプルの血液を郵送すると、2~3週間で分析結果が届きます。

費用はいずれも30,000円ほどかかります。

前述の4歳のお子さまが検査をしたところ、アレルゲンは何も見つからなかったとのこと。

■検査結果の一部(4歳・男の子)。全部でこの倍ほどの検査項目があったそうです。

検査結果

4)除去・誘発食事法

検査は高額ですし、クリニックへ行くのも勇気がいりますよね。また、上記のような検査をしているクリニックは、日本では特に地方に行くと数少ないため、探すのも一苦労かもしれません。

そんな時には「除去・誘発食事法」というものもあります。

時間と観察力が必要ですが、遠方まで通院しなくても、ご自宅でお子さまの様子を見ながら調べられるのがメリット。

やり方は以下のようになります。

【除去段階】2〜3週間、原因と思われる食物を一旦除去する

子供の様子や行動が改善されるかどうかをよく観察し記録する。

【誘発段階】3日おきに、食品を1つずつ戻していく。

このとき、頭痛、下痢、便秘、多動やイライラなどの問題反応があるかどうか、よく観察する。

【判断】もし症状が出れば、その食物に過敏性があることがわかる。

 

一度にたくさんの食物で試すと大変なうえ、結果が見極められないので、まずはグルテン・カゼイン除去で試してみるといいかもしれません。

以下は、実際に4歳のお子さんと親御さんが2週間グルテンを除去し、その後少しずつ食べてみた時の経過と感想です。

さまざまな心身の変化が表れているのがお分かりいただけるでしょうか。

事例)発達障害のある息子(4歳)と母親が2週間グルテンを除去した結果と感想

息子はクリニックの毛髪検査でグルテン不耐性の数値が出たので、まずは小麦粉を使った製品を抜きました。現在も、完全ではありませんが極力控えています。

私自身は検査をしていませんでしたが、試しにグルテン・カゼインフリーをやってみました。

【除去段階】毎日のように取っていたパン・パスタ・バター・牛乳・ヨーグルト・お菓子を2週間やめる

→3日目ぐらいから目覚めがよく、睡眠時間が少なくてもスッキリと起きれる。イライラしない。体が軽い。見た目にわかるぐらい痩せる。

【誘発段階】パンを食べてみる。

→パンが食道を通るのがわかる感覚。胸焼け。食べた後、眠気に襲われる。胃が重い。

 

 

食事療法は長期的な視野でみていく

冒頭で、食事療法の基本は、

  • 足りていない栄養素を足す
  • 良くない影響を与えているものを除去する

とお話ししました。

しかし、上記を同時にスタートさせるのはかなりの負担。

体質改善はすぐには進まないことが多いので、急いで解決しようとせず、長い目で見た方が負担が少なく、続けやすいといえます。

以下は、除去と栄養補給を同時に進めてみた親御さんの感想です。

事例)除去と栄養補給を同時進行してみたときの体験談と感想

息子の発達障害を改善するためクリニックにかかった時の流れは、検査ののち、

  • 良くない影響のある食品を除去
  • 栄養指導で食事の改善
  • サプリで足りない栄養を補給

を同時に行うというものでした。

ある日突然、食生活を一変させなくてはいけない・・という状況ですが、これが体力的にも、精神的にも、金銭的にもとても大変で、3ヶ月ぐらいしか続きませんでした。

それで子どもが大幅に改善したか?というと、正直良くわかりません。(他にも同時進行でいろいろやっていたので)

個人差はあるのですが、サプリメントによる栄養補給は、人によって効果がでるのに半年以上はかかるとも言われました。

除去もしかり・・でしょう。

なので、発達障害の食事療法を行うなら、長期的な視野で見ていくことが大切なのかな、と思っています。

 

食事療法を長く続けるコツ

根気のいる食事療法を長く続けるには、ちょっとしたコツが必要。次にいくつかのポイントをご紹介しますね。

 

親も一緒に食事療法の効果を体感してみる

特に除去は、体に与える影響を自分が実感できると、長く続けることができます。グルテンフリーは比較的取り入れやすく、女性にはダイエットや美肌効果もあると言われているので、自分のために・・と思って試しにやってみるといいでしょう。

子供の状態を正しく知る

今はネットや書籍でいろいろな情報が手に入ります。でも、食事療法はある意味”治療”の分野。

個人的推測ではなく、医療機関の正しい検査結果を元に進めていくのが安全かつ効率的でもあります。

食事療法による子供の変化をメモで残しておく

長く続けるには、子どもの小さな変化を見逃さないことです。

ただ、毎日見ていると悪いところばかり目につき、「こんなに頑張っているのにどうして・・?」と諦めがちです。

そんな時、簡単にお子さまの問題行動や、できるようなったことをメモに残しておくといいです。こちらも、毎日だと大変なので、冷蔵庫などに貼ってきづいたらメモする・・ぐらいのつもりで。

メモ

親子に合った食事療法を見つける

親子によって取り入れやすいものは違います。

グルテン除去がハマる方もいれば、サプリメントが合う方もいます。

糖質制限がやりやすい方、玄米にしたら家族全員調子良くなった・・などなど。

人によって合うものは様々。合うものは続きます。試行錯誤しながら、家族全員が無理なく続けられるものを見つけてください。

 

食事療法の正しい理解と、信じる気持ち

食事療法を行う時には、親御さん自身が正しく理解し、本当によいと思って初めて成立します。

サプリメントも「本当にこれは効くのだろうか?」と疑問を持ちながら与えるのと、「これはあなたの心と体をぐーんと軽くするものだよ」と言って与えるのとでは、効き目や体感が違ってくるはず。

自信を持ってお子さんと一緒に食事療法を進めていきましょう。

 

発達障害の食事療法を学ぶには

発達凸凹アカデミー

偏食と食事療法

この記事監修の管理栄養士 小林浩子先生が作った1日3時間で食事療法と偏食について学べる講座【子どもの発達支援基礎講座 偏食と食事療法】では、食事療法とは?という基本から発達障害の子供に足らない栄養素、毎日の食事に無理なく食事療法を取り入れられる基本を学ぶことができます。

【講座は全部で3種類】

 

まとめ

一言に発達障害の食事療法といっても様々なものがあります。

ストイックに短期間でやるのもいいのですが、やはり長期的な視野で、長く・ゆるく・楽しみながら続けていくことが大切です。

食の知識は、一生モノ。

”療法”として難しく捉えるのではなく、毎日の生活習慣の一つとして、大きな目線で取り組んでみてください。

「気づいたらよくなっていた」

そんな変化が、お子さまに訪れることを願います。

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