「発達障害がある子の食生活を見直したい」
「落ち着きがない子なんだけど、積極的に摂った方が良い栄養素ってあるのだろうか」
「どんな食事を作ればいいのか・・レシピが欲しい」
発達に凸凹のある子を育てていると、「食事を見直してみようか・・」そう考えることは、何度となくあると思います。
療育的な支援と併せて食生活を改善していくことは、子供の発達を多方面からサポートすることになり、支援としては好ましいやり方です。
食事改善と聞くと大変そうなイメージを持ちますね。でも、家庭でゆるく実践できる方法もあります。
この記事では、発達障害アカデミーの講師でもある、発達障害専門管理栄養士 小林浩子先生監修のもと、発達障害のある子に不足しがちだと言われている栄養素のお話や、食事支援に取り組む際の心構えなどについてお伝えします。
家庭で簡単に作れる食事レシピもご紹介していますので、ぜひ参考にしてください。
- 1. 発達障害の子に不足がちだと言われている栄養素3つと食材例
- 1.1. ①ビタミンB群
- 1.2. ②カルシウム
- 1.3. ③オメガ3
- 2. 不足しがちな栄養素を足すときに知っておくべきこと
- 2.1. ①長い目で見て取り組む
- 2.2. ②体に不要なものががあることも知り、避ける
- 3. 発達障害の子に摂って欲しい栄養素を意識した食事とおやつの簡単レシピ7選
- 3.1. ①小松菜のクルミ胡麻和え
- 3.2. ②レタスの塩こうじ豚肉巻き
- 3.3. ③さば缶の卯の花汁
- 3.4. ④一口生揚げの照り焼き
- 3.5. ⑤小松菜のチャーハン
- 3.6. ⑥ホット甘酒ココア亜麻仁油入り
- 3.7. ⑦モッチモチどら焼き
- 4. 発達障害の子の食事について、もっと詳しく学びたい方へ
- 5. まとめ
発達障害の子に不足がちだと言われている栄養素3つと食材例
昨今、発達障害と食事に関する情報は増えており、書籍やインターネットで簡単に手に入るようになりました。ですが溢れる情報を前に、「どれが大事なのか」「どう優先順位をつけたら良いのか」と整理しきれないこともあるのではないでしょうか。
そんな方はまず、不足しがちな栄養素を補給することから始めましょう。お伝えする3つの栄養素を毎日の食事で摂れるように、心がけてみてください。
①ビタミンB群
ビタミンB群は、体の代謝に欠かせない栄養素です。発達障害のお子さんは、代謝がスムーズでない子も多いため、積極的に摂取することが望ましいです。
ビタミンB群を多く含む食材には、次のようなものがあります。
ビタミンB群の多い食材例
- 肉類(豚肉は特に多い)
- ウナギ
- 豆類(豆腐、納豆、厚揚げ、高野豆腐など)
- レバー
- アーモンド
- 卵
- 魚介類
②カルシウム
カルシウムは、骨や歯の材料となり、精神を安定させるといった特性を持つミネラルです。体内で一番量が多く存在してるミネラルでもあり、体の中で中心的な役割を担う重要な栄養素だと言えます。
実は、日本人に不足しがちなミネラルの一つがカルシウムです。一般的に不足しがちであるということは、発達障害のお子さんも同様にカルシウム不足であると考えられますので、意識してカルシウム不足を補っていきましょう。
カルシウムを含む食材には、次のようなものがあります。
カルシウムの多い食材
- 豆類(豆腐、納豆、厚揚げ、高野豆腐など)
- 小魚(しらす干し、さくらえび、ししゃもなど)
- 海藻類
- 野菜類(小松菜、菜の花、水菜、切り干し大根など)
- 乳製品(牛乳、ヨーグルト、チーズなど)
カルシウムは、ビタミンDと一緒に摂ると吸収が良くなります。魚類はカルシウムもビタミンDも含まれているので、積極的に摂っていきたい食材です。その他、きのこ類にもビタミンDが多いです。
③オメガ3
オメガ3はn-3系と呼ばれる脂肪酸の一つで、DHAやEPA、アルファリノレン酸と呼ばれるものが該当します。
脂質にはいくつかの種類があり、私たちは意識しなくても普段の食事から十分に摂取できるものがほとんどです。しかし、その中でも不足していると言われているあ脂質があり、それがオメガ3です。
オメガ3には、細胞膜を柔らかくして栄養の出入りをスムーズにするという大事な働きがあります。また、体内では生成されない栄養素のため、食事など外部から取り入れなければなりません。意識して積極的に摂っていきましょう。
オメガ3系の脂肪酸を含む食材には、次のようなものがあります。
オメガ3の多い食材
- 青魚(あじ、いわし、さんま、さば等)
- えごま油、アマニ油、しそ油
- くるみ
魚の調理が苦手な人は、サバ缶やイワシ缶を利用するのがおすすめです。手軽にオメガ3を摂ることができ、最近はネット上でも魚の缶詰を使ったレシピがたくさん見つかります。記事内でもサバ缶を使ったレシピを一つご紹介しているので、参考にしてください。
不足しがちな栄養素を足すときに知っておくべきこと
補給すべき栄養素が分かると、毎日の献立を考えるときに意識できるようになるため、自然と食卓に並ぶ食事が変わってくると思います。
ここで、発達障害の子の食事サポートを続ける上で、心に留めておいて頂きたいことを2つだけお伝えします。
①長い目で見て取り組む
一つ目は、食事改善を進めるときは、長い目で見て欲しいということです。
食事改善は、始めてすぐに劇的な効果が現れるものではありません。個々の体質によっても違ってきますし、食生活以外の要因が絡んでいて、期待するような変化が見られないこともあります。
ですので、「数か月続けたけど、変化がないから止めてしまおうか」というのは、もったいないのです。ポイントは、ゆるくても、途切れることなく長く続けること。食事と併せた別方面からのサポートも大事です。
どうか気長に、今やっていることが3年後、5年後につながる。そんな気持ちを持って取り組んで頂ければと思います。頑張り過すぎると疲れてしまいますから、無理をせずに。楽しみながらできると良いですね。
②体に不要なものががあることも知り、避ける
体には必要な栄養素があると同時に、不要とされるものもあります。
体に不要なものを摂り続けていると、せっかくの栄養素が吸収されにくくなるため、避けるように心がけましょう。
代表例は食品添加物です。すべての食品添加物を避けることは無理ですから、できるだけ添加物の少ない食材を使うなど、できる範囲で意識してみてください。
また、グルテンという小麦に含まれているたんぱく質の一種がありますが、発達障害のある子はグルテンを避けると良いとも言われています。最近ではグルテンフリーという言葉も浸透してきているので、ご存じの方も多いでしょう。小麦の代替となる食材は見つけやすいので、グルテンフリーの食材を取り入れてみるのも一つです。もちろんゆるくて大丈夫です。
発達障害の子に摂って欲しい栄養素を意識した食事とおやつの簡単レシピ7選
ここからは、先述した不足しがちな栄養素が摂れるレシピをいくつかご紹介します。お家で簡単にできるものばかりなので、ぜひ作ってみてください。
①小松菜のクルミ胡麻和え
カルシウム豊富な小松菜、オメガ3食材のくるみを使ったレシピです。加熱した小松菜に材料を和えるだけで、とても簡単に作れます。レシピは糖質を抑えるためにラカントS液状が使われていますが、てんさい糖に置き換えて作れます。
<材料>
- 小松菜 2株
- くるみ 2~4粒
- 黒すりごま 大さじ2
- ラカントS 液状 大さじ1/2
- しょうゆ 大さじ1/2
<作り方>
小松菜を加熱して2センチほどの長さに切り、くるみ、黒すりごま、てんさい糖、しょうゆを混ぜ合わせる。
②レタスの塩こうじ豚肉巻き
ビタミンB豊富な豚肉を使ったレシピです。発酵食材である塩こうじは、肉のうまみを引き出してくれるだけでなく、腸内環境にもよいですね。黒酢を使ったたれは、子供でも食べやすいです。
<材料 (一人分)>
- 豚薄切り肉 200g
- 塩麹 小さじ1(塩こうじの塩分濃度によって調節してください)
- レタス 200g
たれ
- 黒酢 大さじ1
- しょうゆ 大さじ1
- ラカントS液状 小さじ1
<作り方>
- 塩麴に10分ほど漬けた豚肉に、半分くらいにちぎったレタスを巻いていく
- レンジで5分間ほど様子を見ながら加熱する(ふた付き容器を使用)
- たれの材料を合わせる
③さば缶の卯の花汁
オメガ3たっぷりのさば缶を使った汁物レシピ。おからパウダーを入れてビタミンBも補給できて、栄養満点です。
<材料>
- さば水煮缶 1缶(200g)
- おからパウダー 大さじ4
- だし汁 カップ1と1/2
- 味噌 小さじ2
- しょうが千切り 小さじ1
<作り方>
鍋にだし汁、汁気を切ったさば、おからパウダーを入れて火にかけ、温まったら味噌を溶かす。器に盛り、しょうがをのせる。
①~③のレシピは、小林浩子先生の「食事を変えてラクラク解決!脱うつレシピ」を参考にご紹介しました。ご紹介したレシピの他にも、必要な栄養素がしっかり摂れて簡単に作れるレシピがたくさん掲載されています。
④一口生揚げの照り焼き
厚揚げとごまを使ったカルシウム満点のレシピです。少し時間をおくと、味が染みてとってもおいしいです。
<材料>
- 一口生揚げ 10個(370gくらい)
- 白ごま 適量
- しょうゆ 大さじ2
- みりん 大さじ2
- てんさい糖 小さじ1
- 片栗粉 小さじ2
<作り方>
- 生揚げを半分に切る
- 調味料(白ごま以外の材料)を合わせておく
- 油をひかずにフライパンで焼き、火が通ったら2を加え、沸騰させながら絡める。
- 白ごまを全体に和える
画像付きの詳しい作り方はこちら ↓
⑤小松菜のチャーハン
献立に迷ったときに大活躍してくれるチャーハンレシピ。小松菜をたっぷり使ってカルシウムも満点です。レシピはご飯2合分です。
<材料>
- 小松菜 2株(ゆででみじん切り)
- 卵 2個
- 豚肉 150gくらい(コマ切り)
- 人参 小1本(千切り)
- ご飯 2合(約700g)
- 塩スープの素 1袋(10g)
- しょうゆ 大さじ1
- 片栗粉 大さじ1
- ごま油 大さじ2
<作り方>
- ゆでてみじん切りにした小松菜にしょうゆ大さじ1、豚肉に片栗粉大さじ1をあえておく
- 卵をよくほぐし、冷やご飯にまんべんなく混ぜ合わせておく
- 豚肉と人参を炒め、火が通ったら皿に移しておく
- 2を炒め、パラパラになったら、3を混ぜ合わせる
- スープの素、小松菜の順に入れ、混ぜ合わせる
画像付きの詳しい作り方はこちら ↓
⑥ホット甘酒ココア亜麻仁油入り
発酵食品である甘酒で作ったココアに、オメガ3食材の亜麻仁油を加えたスーパー飲み物です。亜麻仁油が苦手な方でも、とても飲みやすいと思います。ココアにはカフェインが含まれているので、就寝前は避けて試してみてくださいね。
<材料>
- 甘酒1/2カップ
- ココア 小さじ1
- アマニ油 小さじ1
<作り方>
甘酒とココアを混ぜて人肌まで温め、亜麻仁油を入れる。
⑦モッチモチどら焼き
グルテンフリーのどら焼きレシピです。レシピでは大豆粉の入ったパンケーキミックスを使っているので、カルシウム補給にもなります。白玉粉を加えてモチモチ食感を出すレシピは参考になりますよ。レシピの分量で4個分のどら焼きが作れます。
<材料>
- 白玉粉 20g
- 豆乳 20g
(上記2つは合わせておく)
- 大豆粉と米粉のパンケーキミックス 80g
- 豆乳 70g
- メープルシロップ 大さじ1
- あんこ 適量
- 米油 適量
<作り方>
- 白玉粉と豆乳20gを合わせておく。
- パンケーキミックス、豆乳、メープルシロップを加えてよく混ぜ合わせる
- フライパンに油を敷き、直径約8㎝くらいの大きさで8枚焼く
- あんこをはさむ
画像付きの詳しい作り方はこちら ↓
モッチモチどら焼き
発達障害の子の食事について、もっと詳しく学びたい方へ
発達に凸凹のあるお子さんは、好き嫌いが激しかったり、偏食だったりという子もいます。この場合は、無理強いしないことが大切です。
発達障害の子の食事や、偏食への対応方法について、もっと理解を深めたい方は、発達凸凹アカデミーの講座で学ぶことができます。講座でご紹介する食事法を実践された方の約8割から「よい効果が見られた」というお声を頂いている講座です。
講座の詳細はこちらで紹介しています。興味を持たれた方は、ご覧くださいね。
まとめ
発達障害のある子の食生活を見直すことは、療育的な支援を合わせて行うと、多角的なアプローチができてとても有効です。
食事改善をする際は、発達障害の子に不足しがちと言われている栄養素、ビタミンB、カルシウム、オメガ3を意識して摂っていきましょう。
摂った栄養素がしっかり吸収されるように、体に不要なものを避けることも大切です。避けた方がよいものとしては、添加物や小麦製品などがあります。
食生活は毎日のことですから、無理をせず、できる範囲で取り組んでみてください。
すぐに結果を求めずに、長いスパンで継続していくことが成功のコツです。数年後を見据えて、ゆるく取り組んでくださいね。
監修:発達障害専門管理栄養士 小林浩子
神奈川県在住。
自閉症スペクトラムの娘、アスペルガー症候群の息子を育てている母として娘の超偏食で、精神的にとても苦労した経験から、同じようにお悩みのお母様のお役に立ちたいと、活動をスタート。発達障害のための料理教室、成人の発達障害のための栄養講座、自立のための料理の視覚支援など、発達障害専門の管理栄養士として、広く活躍している。
発達凸凹アカデミーでは「偏食と食事療法」講座の企画・開発を担当。発達障害の子どもに必要な栄養素や家庭で気軽に取り入れる方法、食べない子どもに寄り添う支援方法などを伝えている。
著書「食事を変えてラクラク解決!脱うつレシピ」(三空出版)