一家でグレーゾーンも含む発達障害のお子さんが2人以上いる場合、それぞれのお子さんの特性によって、その場での対応が難しいと感じることがあるでしょう。
・兄弟姉妹の喧嘩の回数が多すぎる。
・苦手なものがそれぞれあるので、兄弟姉妹揃って一緒に外出することができない。
・特性の程度が軽いお子さんが置き去りになってしまうことが多い。
・それぞれのお子さんの特性に合わせた対応をしたいのに、きょうだいがいるとうまくいかない
等といった悩みがある中で、周りのお母さんと同じような対応が我が子にはうまくいかないと悩むこともあるのではないでしょうか。
ここでは、実際に発達障害の兄弟姉妹の育児をしてきた親御さんが行ってきた対応方法の工夫やアイデア、意識してきたことをご紹介していきます。
なぜきょうだい喧嘩が起きる?!
子どもの特性(こだわり)が異なることで、同じ場での対応が難しいという悩みを多く耳にします。そこで、きょうだい喧嘩を例にして、考えてみることにしました。きょうだい喧嘩はどの家庭でも生じるものですが、きょうだいで発達障害がある場合、考えられる原因がいくつかありそうです。
■子どもの特性が関係しているかも…
発達障害のきょうだいを育てているママたちに、どんな時にきょうだい喧嘩が起きるのか聞いてみました!
些細なことで暴言を吐いたり暴力的になってしまったり、嫌なことがあったときに、泣いたり怒ったりします。
勝敗のある遊びで負けて癇癪を起こして、きょうだいもイライラして喧嘩になります。
周りの状況を見ずにきょうだいが遊んでいるおもちゃやゲームを途中で奪ってしまいます。
自分の嫌なことを断れなかったり、意見を言えないことがストレスとなって、きょうだいと喧嘩になっているようです。
きょうだいが加わることで、自分のペースを乱されてしまって喧嘩になります。
言葉をそのままの意味で受け止めてしまうことで、相手の発言を勘違いしていることがあります。
きょうだいの声や癇癪が耳に響くようで、きょうだいに暴力をふるってしまいます。
こういったことがみられるのは、切り替えが苦手、感情表現がうまくできない、衝動性、感覚過敏などの特性が絡んでいる場合があります。
■きょうだいの前でダメ出しをしている
つい、お子さんができていないことに目が向いて、きょうだいの前でダメ出しをしてしまうことはありませんか?きょうだいの前で言えば、他のきょうだいも意識するようになるだろうという考え、気になった時にその場で注意をしたくなるかもしれません。
しかし、発達障害のお子さんは、それぞれ苦手なものを抱えています。気を付けようと思っても特性が邪魔してしまうことがあり、できるようになるまでに時間がかかります。子ども同士で苦手なものを指摘し合うと、ダメだしされた子どもは「否定された」、更には「いつもダメ出しする人」という気持ちが芽生え、きょうだい喧嘩に発展してしまうのでしょう。
■家庭以外でのストレス
学校や保育園幼稚園など外で頑張っているストレスや日頃のストレスを言葉で伝えることが難しく、ちょっとしたことで攻撃的になり、きょうだいを叩いてしまうことも考えられます。「叩く」という行動でSOSを出している可能性もあります。
このようにきょうだいそれぞれで発達の特性が異なると、相関関係で余計にこじれやすくなってしまいます。また喧嘩だけでなく、片方のお子さんの興奮にもう片方のお子さんが加担してより大きな騒ぎになることもあります。
きょうだい喧嘩を減らす工夫
きょうだい喧嘩が少しでも減ってくれたら…と願う親御さんは多いと思います。
では、実際にママたちはどのように対応しているのでしょうか?様々な工夫をみてみましょう!
注意ではなく、「あと5分遊んだら、歯磨きしようよ」「レゴブロックをこの箱に片付けてくれる?」など、やってほしい行動を具体的な指示で声かけをしています。
その子だけに伝わるジェスチャーを活用してみました。
肯定的な声かけをするようにしています。
きょうだい間でトラブルになりそうなときでも、笑顔でゆっくりと声かけ(フォロー)することを意識しています。
ママたちの工夫は、どれも良いですね。お子さんに声かけをするときに、きょうだいにきこえない程度の距離まで近づいて具体的な指示を出したり、ジェスチャーを活用したりすることで嫉妬によるきょうだい喧嘩を防ぐメリットもありそうですね。また、お子さんに声かけをするときに、一呼吸おくとイライラが落ち着いて、肯定的な声かけや笑顔で声かけがしやすくなるでしょう。
周りの大人ができること
■それぞれの時間を持つ
特性が異なるお子さんへの対応は、なかなかうまく行かないことも多いですが、「2人だけの時間を作る」ことを意識してみるのはどうでしょうか。
「この日の午前中は2人だけの日」という日を設定して、お子さんの希望に沿った時間を過ごしてみることで、自分と向き合ってもらえたという満足感に繋がってくるでしょう。そのような日を定期的に設定することで、2人だけの時間を楽しみに過ごせるようになるかもしれません。また、2人だけの時間の時にお子さんから本音を引き出したり、そのお子さんの観察に専念できたりすることで、新たな発見が得られることもあるでしょう。
そんな時間の確保は難しい・・・という場合もあります。その時は、1日の中で5分でも良いので、お子さんが「遊ぼう」「話を聞いてほしい」などと求めてきたタイミングで相手をしてみるのはどうでしょうか?求めてきたときに応じてもらえると、短時間でも満足度が高まるのではないでしょうか。
お子さんからのアプローチはないけれどお子さんとの時間を持ちたいと思った時のために、お子さんと短時間でできそうなことをストックしておくのも良いですね。
■きょうだい間の通訳やフォローに入る
まわりの大人がきょうだいの気持ちを代弁してあげたり、話の内容を「交通整理」してあげることで、喧嘩に発展することを避けられることもあります。
例えば、激しい遊びが好きな姉と静かに1人で遊ぶことが好きな弟の場合、いつもは仲良く遊べるものの、今は1人で静かに遊びたい様子が見られます。
「今は1人で遊びたいみたいだよ」と、姉に弟の気持ちを周りの大人がそっと伝えてあげることで、『いつもなら遊べるのに、何で今日はダメなんだろう?』という姉の疑問を解消することにも繋げられます。
■順番制や曜日制にする
お子さんの要求に応じようと思っても、きょうだいが割り込んでくることもあるでしょう。特性や年齢順も絡んでくることもありますが、お子さんの様子を見ながら、順番制や曜日制にすることを提案してみるのはどうでしょうか?
■他の子どもとの比較をしない
同じ診断名でも、発達障害のお子さんは、得意不得意の差が激しく、それぞれのお子さんによって得意不得意はまちまちです。努力して、できないことや苦手なことを克服することが困難なこともあります。きょうだいで発達凸凹のお子さんを育てていると、上のお子さんと同じような成長をたどると思ってしまいがちですが、きょうだい間で比較をせずに、お子さん1人1人の特性を理解して接することができると良いですね。
■平等より公平を意識する
年齢差や障害の程度で関わり方が異なってくるのはもちろんですが、上のお子さんや障害が軽いお子さんが置き去りになってしまうことがある一方で、親御さんはそれぞれのお子さんと「平等」に関わりたいと願い、関わり方に苦戦しているかもしれません。
しかし、年齢差や障害の程度で、それぞれのお子さんによってできることや難しいこと、得意不得意も異なります。また、親御さんがきょうだい平等に褒めて接しているつもりでも、発達障害の特性によっては、「褒められていることに気づいていない」「褒めを素直に受け止められない」など、お子さんの捉え方が異なっていることもあります。
1人1人のお子さんの年齢や特性に合わせたサポートや関わりで「公平」に接することを意識してみるのはどうでしょうか。
■きょうだい喧嘩はあっても当たり前
きょうだい喧嘩がない方がいいですが、「あっても当たり前」と認識しておくだけでも、親御さんの喧嘩に対する受け止め方が変わってくるでしょう。時には間に入る必要が出てくることもありますが、きょうだい関係を良くしていくためにも大切なことだと思うのはどうでしょうか。そして、きょうだいが仲良くしている時は、それを1人1人褒めて伝えられるといいですね。
■相談や話せる場、休息時間の確保
発達凸凹のあるお子さんを2人以上育てている親御さんは、息をつく暇もないほど頑張っていらっしゃいますね。相談や親御さん自身の気持ちを話せる場を確保したり、頼れる機関を利用して休息時間の確保も大切にすることをお勧めします。気持ちがリフレッシュすることで、お子さんの関わり方に変化をもたらすこともあるでしょう。
まとめ
- きょうだいそれぞれの特性が絡み合って喧嘩に発展しやすいけれど、きょうだい喧嘩はあって当たり前と認識しておく。
- 短時間でも1対1で関われる時間の確保をしてみる。
- 平等より公平さを意識してみる。
発達障害のお子さんが複数いると、一筋縄ではいかないことも多々あると思います。また、お子さんをじっくり観察して特性を把握したくても、落ち着いて観察することは難しいかもしれません。ですが、お子さんと1対1の時間を確保した時に1つでも発見があればいい!くらいの気持ちで過ごせるといいですね。