中学生になって、学校への苦手意識が強くなっている様子が見られることはありませんか?
ー小学校から苦手意識が見られていたけれど、より強まっている。
ー学校から帰宅すると、とても疲れている。
中学校生活に慣れるまでの辛抱かもしれないと見守っていたものの、負担の度合いがとても大きいように感じ始めている親御さんもいることでしょう。
ここでは、小学校と中学校の違いや苦手意識が強くなっていく背景に何があるのか、親御さんにできるサポート方法をご紹介していきます。
小学校と中学校の違い
勉強面
◎授業
小学校では使用する教科書が薄いこともあり、授業内で復習や予習ができますが、中学校では授業で扱う内容が増えて、進めるスピードが早くなってくるため、復習を行うことはほとんどありません。また、授業時間が増えて、1日の時限数も増えてくるため、勉強に取り組む時間が大幅に増えます。集中力の維持が難しくなるお子さんも出てくる可能性があります。
◎科目
英語の授業も英語に慣れ親しむ小学校の授業から知識や実践として学ぶ形式になる中学校生活に移行し、「算数」が「数学」となり、難易度が上がって理解が追い付かなくなってしまう事もあります。また、教科書の量も多くなり、その教科で必要なものがどれなのかわからなくなってしまうことも出てくるでしょう。
◎先生が教科制
教科ごとに担当の先生が変わるため、それぞれの先生と関わる時間が少なくなります。様々な先生との関わりが持てることにメリットを感じるお子さんもいると思いますが、質問をしにくいと感じたり、質問をするタイミングを逃してしまう可能性もあります。先生も生徒1人1人のことを十分に把握しにくくなります。
◎試験
小学校では、単元ごとの確認テスト程度の内容だったものが中学校になると、「中間」「期末」「学年末」などのように決まった期間で全教科の試験をまとめて行なうことになります。試験内容も応用問題も多用されるため、暗記や公式の活用だけでは解けない事も増えてきます。
生活面
◎部活動
週に1回程度のクラブ活動だった小学校に対して、中学校では本格的な部活動が始まります。部活への参加が必須という学校もあるかもしれません。部活で疲れている上に宿題に取り組むことが大変だと感じて、部活と勉強の両立に疲弊してしまうお子さんもいるでしょう。
◎帰宅が遅くなる
放課後はゆっくりと過ごせていた小学校時代に比べて、中学生になると、授業数や授業時間が増えて、更に放課後は部活動や生徒会委員会活動で帰宅時間が夕方遅くなります。疲れやすいお子さんや自由時間が減ってしまうことにストレスを感じてしまうことも考えられます。
◎服装
小学校の時は私服で1日をすごしていましたが、中学生になると制服の着用時間が長くなります。また、学校によっては、部活動用の着替えも生じて、1日の中で着替えを1日に2・3回行なうこともあるかもしれません。また、「紐付き用の靴」を指定している学校も多く見られます。
学校が苦手になる原因
刺激
刺激の変化に弱いお子さんの場合、新しい環境で周りの様子や音や声、匂いや気配が刺激となってしまうことがあります。教科ごとに先生が変わるため、先生の声や匂い、先生の振舞い(気配)が頻繁に変わり、落ち着かなくなってしまったり、疲れてしまうこともあるでしょう。
過敏
先生の話が聞き取れなかったり、声のトーンが耳に触ってしまったり、クラスのざわつきで集中できなかったり、匂いの変化が続いたりすることで、疲れやすくなる可能性があります。また、教室の明るさがまぶしかったり、給食の匂いに敏感な場合もあります。
処理速度
小学校と比べて授業の進度が早いため、先生から言われたことをこなしたり、内容を理解するのに時間がかかってしまい、後れを取ってしまうお子さんもいるでしょう。集中力が途切れやすいお子さんの場合は、先生の話が入りにくくなっていることもあります。
また、宿題の量も増えて、宿題をこなす時間が大幅に増えてしまうことも考えられます。
ヘルプが出せない(選択肢がない)
先生が教科ごとに変わるため、余計に先生にヘルプを出す方法がわからなくなったり、出すタイミングがつかめないまま日々が過ぎ去ってしまうことも考えられます。ますます勉強がわからなくなったり、何をしたらよいのかわからなくなったりして、孤立を感じてしまうこともあるでしょう。担任の先生も朝と帰りの時間だけの関わりになるため、先生に相談しづらくなってしまうケースや先生同士で生徒の共有が難しくなっていることもあるかもしれません。
交友関係が難しい
複数の小学校から中学校に集まって、小学校よりも生徒の人数が大幅に増えるケースでは、交友関係を広めるチャンスがある一方で、交友関係に苦しむお子さんも出てくるかもしれません。例えば、同じ小学校出身の人が少なく、他の小学校出身同士でグループができていることも考えられます。また、小学校1校が持ちあがりのまま中学校生活が始まる地域もありますが、思春期も手伝って、今までの交友関係のまま交流を続けることが難しいケースも出てきます。
また、空気を読んだり、曖昧な会話表現がわかりにくいと感じていることもあるでしょう。そうすると、「学校がつまらない」「学校が辛い」と感じてしまう可能性もあります。
親御さんにできるサポート方法
お子さんにとって、学校が苦手になる原因がわかったところで、親御さんができるサポート方法を考えてみましょう。
休養を取る
普段から頑張っている分、わたし達が思っている以上に心身ともに疲れていると思います。本人の状態に応じて、通常の休日以外でもお休みを入れることも視野に入れてみることもお勧めします。
休み癖や怠け癖を心配してしまうかもしれませんが、心身のバランスを取りながらの生活の方がお子さんも安定した日々を送れるでしょう。親御さんが登校自体を柔軟に対応してくれることで、お子さんからSOSが出しやすくなる可能性もあります。一度休むことで、学校に行くことで疲れる状況を振り返り、改善策や対応策を練るのに必要な時間だと捉えてみるのはどうでしょうか。
自己肯定感があがる声かけ
クラスメイトなど周囲の人と同じようにできなかったり、周囲から注意を受けることが多かったりすると、自分に自信が持てなくなってしまうことがあります。お子さんの長所や頑張っているところを褒めたり認めたりする声かけをして、お子さんの自己肯定感をあげられると良いですね。
褒めるところが思いつかないと思ってしまう事もあるかもしれませんが、学校から帰ってきたときは「6時間目まで授業を受けてきたんだね。おつかれさま」などと、できているところに目を向けて声をかけてみるのはどうでしょうか。
休むことで「体」のエネルギーが溜まっても、「心」のエネルギーが足りないと動けない事もあります。そういう意味でもプラスの声かけやお子さんと十分に関わってあげることで、心のエネルギーを補給して疲れを軽減させるとよいのかもしれませんね。
代替案を提案する
制服の素材が合わないことが原因の場合は、制服に近い素材のものを代わりに着用するのはどうでしょうか?ワイシャツのボタンが留めにくい場合は、ボタンをスナップボタンに変えるなど、お子さんができる手段に変えてみるのもいいですね。ネクタイやスカーフが上手に巻けないことが原因の場合は、既に出来上がっているネクタイをワイシャツに留めるだけにする等の工夫はどうでしょうか。靴紐は、ゴムタイプの靴紐やダイヤル式の靴を使い、紐を結んだりほどいたりする手間を省けるといいですね。
ベルトがうまく使えない場合は、「ループベルト」のようにベルトをセットしたまま着脱ができるものやバックルに引っ掛けるだけのベルトなどがあります。
学校の先生と相談する
担任の先生やスクールカウンセラーと相談してみるのも1つの手です。担任の先生は、小学校の時に比べたらお子さんと関わる時間が少なくなってきているかもしれませんが、学校でのお子さんの様子を一番把握しているはずです。担任の先生と対応方法を一緒に考えたり、お子さんに合った対処法や代替案をお願いしつつ、「我が子はこうすればできます」と伝えてみるのはどうでしょうか。
また、スクールカウンセラーに相談して、スクールカウンセラーから担任の先生やお子さんに関わる先生にお伝えいただく方法もあります。
荷物の管理
教科書が多くて管理に困っている場合は、教科別にファイルケースに入れたり、色分けして目印を作る等の工夫をしてみることをお勧めします。
整理整頓が苦手なお子さんの場合、1つのファイルケースに1教科で使う一式を入れておくと、出し入れがしやすくなったり、机の中やバックの中から探すときも見つけやすくなります。ファイルの中に入っている教科の写真を撮ってファイルに貼り付けておくと、片付けるときにも確認がしやすいでしょう。また、その教科でもらったプリントもファイルに入れておけば紛失する可能性が低くなることも考えられます。
ファイルケースではなく、教科別に色を決めて、教科書やノートにシールやマスキングテープ等で目印をつけておく方法もあります。国語は赤、算数は緑…というように決めておくと、文字が読みづらいお子さんでも同じ色のものを集めて準備をすることができます。ノートの場合、色別にノートが用意できればいいですが、難しい場合は、シールやマスキングテープ等を貼るのに加え、ノートの片隅に教科名を書いた色テープを貼り付けておくと、机の中から取り出すときにテープの色や文字で見つけやすくする方法もお勧めです。
サポートするときのポイント
家庭でお子さんのサポートをする時、大切にしたいことがあります。
1)ゴールを決める
お子さんが求めているゴールが何かを確認しましょう。
- 完成させること?
- 提出できること?
また、お子さんがゴールに納得できているかどうかも確認することも大切にしたいことです。もしかしたら、ゴールしたいと思っていないこともあるかもしれません。
2)どうすればゴールできるかを考える
お子さんが求めている「ゴール」がわかったら、どうしたらゴールできるかを考えてみましょう。
完成させることがゴールの場合は、親御さんがあと一歩の頃まで手伝いをして、仕上げはお子さんにやってもらいます。例えば、宿題を完成させることがゴールであれば、宿題に取り組む準備までは親御さんが行ない、お子さんは問題を解くだけで済む環境設定をしてみましょう。
提出ができればいいと思っているお子さんの場合は、取り組むハードルを低くしたり、選択肢を出したりしてみましょう。漢字を10個ずつ書く宿題の場合は5個ずつ書く、10分間取り組んだものを提出すると決めたりと、お子さんが取り組みやすい方法を提案できるといいですね。
お子さんの気持ちを確認しながら、お子さんが思っているゴール設定が実現するようにサポートしていきましょう。また、親御さんがゴールできたと思っていても、お子さんが本当に納得しているかどうか、ゴール設定を工夫したことでお子さんにとって良いことが起きているかどうかも確認できたらよいですね。
まとめ
・小学校に比べて、中学校生活は環境の変化が大きい。
・学校が苦手になる原因を知り、お子さんに合った対応方法を見つける。
・お子さんの気持ちと親御さんのサポート方法が一致しているかを確認する。
親御さん自身もお子さんのサポートで必死になると思いますが、お子さんとコミュニケーションを取りながら、トライ&エラーを繰り返して、お子さんに合った方法が見つけられるといいですね。また、学校の先生との連携を密にしたり、中学生以上のお子さんがいる親御さんにアドバイスをもらったり、悩みを話せる友だちに話を聞いてもらったりして、親御さん自身も心の余裕が持って日々が送れるようになることを願っています。