「ママがママを支えていく」をテーマに、発達障害やグレーゾーンの子どもを持つ親の学びと集いの場である「発達凸凹アカデミー」を主催してしる伊藤真穂です。
私の次男は、3歳の時、ほとんど言葉を発していませんでした。
当時「3歳 言葉が出ない」で検索して見つけた記事は、ただただ不安と悲しみを募らせるものばかりでした。
あの時私が知りたかったのは、
「この先この子はどうなるのか?」
「話せるようになるのか?」
「何をすればいいのか?」
ということでした。
同じように、いま不安を抱えている親御さんが、この記事を読んでちょっとでも前を向けるようになると嬉しいな、と思います。
今の息子のこと
3歳当時言葉がほとんど出ていなかった息子は、現在小学校の「特別支援学級」に通っています。
診断名としては「自閉症スペクトラム障害」です。
『なんだ、普通級じゃないんだ・・』とショックを受けるかもしれませんね。
私自身も「3歳で言葉が出ない子の多くは知的障害がある」という記事を読んだ時、背筋が凍りつきました。その時のショックは、今でもハッキリと覚えています。
でも、3歳で言葉がでない=支援学級とは限りません。
人の成長はいろいろ、です。
100人いれば100通りの成長があります。
あくまで1つの例として、読んでほしいと思います。
3歳当時の様子
言葉に特化してお話すると、
- 「カンカン」などの擬音を少しづつ出すようになる
- 「まる」は「まう」、「さんかく」は「・・っく」など口がうまく動かないような話し方
- 「まま」「ぱぱ」は言える
単語らしきものは、ほとんどありませんでしたが、突然「ちょうちょ」「ひこうき」と言ったりすることもありました。
しかし、一度言ったらそれっきり・・・なんてことがよくありましたが、忘れた頃にまた突然言い出す・・の繰り返しで、少しづつ単語は増えていきました。
4〜5歳のころ
5歳のころには単語はずいぶん増えていました。
- 「て、に、を、は」は抜いているが、単語の羅列で文章も言える
- 園で誰と遊んだ、何をした、などは伝えられない(こちらから聞けば、YesかNoで答える)
- わからない時に「わからない」「むずかしい」と言える
友だちとはいろんな方法でコミュニケーションを取れているようですが、自分の言いたいことをすべて伝えられないので、もどかしさはあるようでした。
6歳
小学校に入学してから、驚くほど言葉が増えました。
- 今日あったことはだいたい伝えられる
- 学校で友だちとおおよそコミュニケーションを取れる
- 先生に自分の状況や気持ちを伝えられる
もちろん、普通の6歳児に比べればかなり遅れているし、不自由な部分もあります。
例えば、学校であった出来事などを詳細に伝えることはできませんので、何かトラブルがあった時は一緒にいたお友達頼りで、真相がわからないこともしばし・・・。
好きなことは難しい言葉でも言えます。
「サイクロンインターセプター」とか「ハイパーブルーポリス」とか(笑)
友だちの言葉を覚えてくるので、
「やべぇ!」とか、
「◯◯ゲットぉー」とか、
「すっげ」とか・・
普段はたどたどしいのに、
そういった言葉はハッキリと言うので変な感じがします。
言葉を伸ばすためにやったこと
子どもを伸ばすために、いろいろなことをやりました。
詳しくはこちらの記事をご覧ください。
『自閉症スペクトラムの子どもを伸ばすためにできる9つのこと 〜あらゆる療育を試した母が伝える失敗談とやってよかったこと〜』
言葉に特化して言うと以下の4つを中心に行いました。
①実況中継
一緒にいる時、目に入るもの、様子や状況などを言葉で語りかけました。
登園するときに自転車に乗りながら、
「空が青いね」
「鳥が飛んでるね」
「トラックが4台あるね」
目に入るものをすべて。
反応は、特にありません。
見ていない時もあります。
それでも、めげずに実況中継しました。
ただ、家でもずっとだと私も疲れてしまうので、
- 登園する時
- お散歩している時
など、決めてやりました。
入園時は全く反応が無かったけど、
卒園の頃には自転車の後ろから私の背中をたたき、
「ねーねー、鳥さんがいるよ!」
「あ!消防車だ!!」
「ちょっとこっちの道いってよーー」
そんなことまで、言えるようになっていました。
②普通の話をする
これはお風呂の中と決めてやりましたが、
ふつーの話をしました。
今日、自分がこんなことしたとか、こんなところに行ってきた・・とか。
もちろん、何を言っているかわからないと思います。
でも、
私が嬉しそうに話すと嬉しそうな顔をし、
辛そうな顔をすると眉間に眉をよせていました。
私はいつもスタバにPCを持ち込んで仕事をしていたので、いつもそんな話をしていたら、
ある時「ママ、コーヒーやさんでお仕事だからね」と言っていました。
全く違うことをして聞いてないように見えても、ちゃんと聞いてたりします。
最近は「それ何?なんで?どこ?」とか質問攻めに合うので、やっていません・・・
③喜ぶ経験をたくさんさせた
「言葉をだす」前に、まずは「声をだす」機会を与えました。
うちの子は電車が好きだったので、電車を見に行ったりおもちゃで遊んだり。
そのうち、「カンカン」とか「ぶーぶー」とか音を出すようになりました。嬉しくって興奮すると声をだすことが増えてきたので、喜ぶことをたくさんさせました。
すると、
りんごの絵カードを見せて「りんご」とは絶対に言いませんでしたが、
好きな電車を見せて「あれは何線だよ」と教えていたら、気づいたら「よこはましえいちかてつ」と言っていました(笑)
2歳ぐらいまでは、ほとんど音を発しない人だったのに、今では一日中うるさくて仕方ありません。
④スキンシップ
コミュニケーションは言葉だけではありません。肌と肌が触れ合うことでも、十分にコミュニケーションが取れますし、安心感が芽生えます。
息子はいつでもどこでもハグハグしていたので、今でもとっても甘え上手です。
やっておいたほうがよかったと思うこと
もっとやっておいたほうがよかったな・・と思うのは、
「感情の代弁」です。
悲しい時に「かなしかったね」
痛い時に「いたいね」
辛い時に「つらいよね」
感情の表現方法ってすごく難しいし、
この気持ちって「かなしい」っていうんだってことを、知らなかったりします。
いま学校で指摘されているのは、
「泣いたり悔しかったり、いろいろあったのに、最後にどうだった?って聞くと”楽しかった”と言うんです」ということ。
確かに家でもそうです。
たぶん、私が無意識にネガティブな言葉を使わないようにしていたからだと思います。
辛かった、悔しかったという感情を、どう表現していいのかわからないのかな?と感じることがあります。
だから、なんでも「楽しかった」になってしまいます。
これは現在進行形ですが、
悔しくて泣いている時に、
「悔しいよね」
嫌なことされた時に、
「嫌だったんだよね」
『感情を教える』なんて、あまり思いつかないかもしれませんが、教えないとわからないのが発達に凸凹のある子どもなんだと、今になって実感しています。
ママが知っておくといいこと
お子さんによっては、
思ったような反応もしてくれないし、いろんなことをやってもやっても言葉が増えてこない。
こっちがどんなにテンション上げて向き合っても、しらー・・とされると、やる気も失せますよね。
この子は一生、しゃべらないんじゃないか?
そもそも、喋る気がないんじゃないか?
たまには期待通りの反応をしてくれないと、ママのモチベーションも保てませんよね。
「どうしてしゃべらないの!」って言いたくなった時、
期待通りに成長しない我が子にイライラしてしまう時、
ちょっとだけ知っておいてほしいことがあります。
話したくても話せない
誰かにこんなことを言われたことがあります。
「言いたいことが言えないって、すごいストレスだよね」
それを聞いてハッとしました。
うちの子は正直、話したいようには、とても見えませんでした。
でも今になって、「言葉で伝わる」ということがとても嬉しそうで、たどたどしい言葉ですが、一生懸命伝えようとしてくれます。
逆に、すべての思いを伝えられず、もどかしそうにしている時もあります。
そんな時、話すの諦めてしまうこともあります。
きっと当時から、想いは一緒だったのかもしれません。
伝えたいことはたくさんあるのに、伝えられない。
言葉がでない子どもを抱えて、辛いのは自分だと思っていました。
でも一番つらいのは、子どものほうだったんです。
本当は心の中にたくさんの言葉を持っている
無理やり言わせようとしたこともあります。
でも、そーゆーことではないんですよね。
言葉が表出していなくても、こころの中にはたくさんの言葉を持っていたんだ、と感じます。
私たちがジタバタしていることも、
子どもは全部わかっていたように思います。
子どものこころの中は、とっても豊か。
それを表出するタイミングを、自分で決めているのかもしれません。
ママの気持ちの保ち方
そうは言っても、3歳ぐらいになると周りの子どもたちも、ぐんぐん成長するんですよね。
うちの子も、ずーーっと「置いてけぼり」でした。
特に言葉って、発達の基準として目に見えてしまうので、いつも他の子と比べては落ち込んでいました。
そのうち、子どもが集まるところは避けるようにもなりました。
「自分の子どもだけをみて」と言われても、そんなの無理なんです。
じゃぁ、私がどうやって自分を保っていたか?
子どもだけに向けていた目を、外に向けました。
子どもを伸ばすことに集中するのをやめて、自分の好きなことをしました。
まず自分の時間があって、その次に子育てがある。
優先順位を変えたんです。
ただ、それだけ。
発達障害の子どもの大変さは、「親がちゃんと見てないからだ」なんて思われることも多く、つい親御さんが1人でがんばってしまったり、引きこもりがちです。
子どもは子ども。
私はわたし。
だから、実況中継することも、話をすることも、自分で決めた時間しかやりませんでした。
『子ども100%じゃなくてもいい』
心からそう思えるようになった時、子どもはぐーんと伸びているかもしれません。
まとめ
3歳の時できなかった多くのことが、今は驚くほどできるようになっています。
こんな日がくるとは、当時は想像もしていませんでした。
毎日ほんとうに楽しそうに、小学校に通っています。
運動会ではみんなと一緒にダンスを踊っていました。
言葉の遅い子の子育ては、あらゆる面で親も子も、精神的な苦労が多いと思います。1人で抱えず、いろんな方に頼ってくださいね。
※この記事はあくまで私個人の経験です。すべての親子に当てはまるものではないことをご理解ください。