わが子が発達障害と診断されたとき、又はその疑いがあるとわかったとき、「何としてでもできることをしたい!」と思うのが親心ですよね。
「療育施設での支援だけでは不安だし、なかなか思うような結果がでない。もっと家庭でできることはない?」
そんな親御さんに知ってほしいのが、お子さまの体の中からアプローチする食事療法というもの。
この記事では、発達障害の食事療法について、様々な手法や検査方法、家庭での取り組み方などをご紹介します。
<監修:発達障害専門の管理栄養士 小林浩子先生>
- 1. 発達障害の子ども向け食事療法4種類の内容と期待できる効果
- 1.1. 1. グルテン・カゼインフリーダイエット
- 1.2. 2. 糖質制限食事療法
- 1.3. 3. アレルゲンフリー食事療法
- 1.4. 4. 抗イースト食事療法
- 2. 改善が期待できる世界の食事療法
- 2.1. 自然療法
- 2.2. マクロビオティック
- 3. 家庭ですぐにできる!食事療法を意識した取り組み方と参考レシピ
- 3.1. 小麦に代わる食材を使う
- 3.2. 乳製品に代わる食材を使う
- 3.3. 添加物の少ない食材を選ぶ
- 3.4. 精製度の低い食材を取り入れる
- 3.5. まごわやさしいを意識して食材を選ぶ
- 3.6. 不足しがちな栄養素も意識しておく
- 3.7. 代替食材やまごわやさしいこを意識した参考レシピ
- 3.7.1. グルテンフリー玄米粉カレー
- 3.7.2. とうふハンバーグとひじきの煮つけ
- 3.7.3. バナナココアケーキ
- 4. 子どもの体の状態を知る方法
- 4.1. 毛髪検査
- 4.2. ペプチド検査
- 4.3. IgGフードアレルギー検査
- 4.4. 除去・誘発食事法
- 5. 食事療法に取り組むときに大切な心構え
- 6. 食事療法を長く続けるコツ
- 6.1. 親も一緒に食事療法の効果を体感してみる
- 6.2. 子どもの状態を正しく知る
- 6.3. 食事療法による子どもの変化をメモで残しておく
- 6.4. 親子に会った食事療法を見つける
- 6.5. 食事療法の正しい理解と信じる気持ち
- 6.6. 子どもの意思を尊重することも忘れずに
- 7. 家庭で無理なく取り入れる「発達障害の食事療法」を学ぶには
- 8. まとめ
発達障害の子ども向け食事療法4種類の内容と期待できる効果
発達障害のための食事療法とは、食事からのアプローチで、生きづらさを改善するためのケア方法です。
基本的な考え方は、
- 良くない影響を与えているものを除去する
- 足りていない栄養素を足す
というもの。
適切に取り組むことで、その効果は発達障害だけにとどまらず、様々な症状に有効とも言われています。
以下、代表的な4種類の食事療法について、詳しい内容をご紹介します。
1. グルテン・カゼインフリーダイエット
食生活の中からグルテンやカゼインを除去する方法です。
グルテンとは小麦などの穀物に多く含まれるタンパク質の一種、カゼインとは牛乳やチーズなどに含まれるタンパク質の一種です。
発達障害の子どもたちの多くは腸内環境が悪いと言われているため、グルテンやカゼインを除去することで、腸内環境を整えることを目指します。
書籍『パンと牛乳は今すぐやめなさい!3週間で体が生まれ変わる』(葉子クリニック院長 内山葉子 著/マキノ出版)では、
パンと牛乳をやめるよう、患者さんに指導を始めて、最初に驚いたのが、小麦の害を勉強するきっかけにもなった発達障害のお子さんたちに表れた効果でした。
出典:パンと牛乳は今すぐやめなさい!3週間で体が生まれ変わる
とあり、期待できる効果に次のようなものが挙げられています。
- 自傷行為や異常行動がおさまる
- 朝までぐっすりと眠る
- 癇癪を起こしにくくなる
- 授業中に座っていられるようになる
2. 糖質制限食事療法
食後に血糖値を急激に上昇させる糖質を制限する食事療法。
血糖値の急上昇や急降下は、体や心に影響を与えると言われています。糖質制限食事療法は、これに対処する食事法です。
パン・白米・麺類・白砂糖などを控え、主食を取るなら未精製の穀物(玄米など)にします。
書籍『子どもの「困った」は食事で良くなる』(溝口 徹 著/青春出版社)によれば、子どもには糖質制限で次のような効果が期待できるそうです。
- しっかりとした筆圧で書ける
- 漢字を覚えるのが早くなる
- 落ち着きが出てくる
- 帰宅後の態度が穏やかになる
また、書籍『発達障害の治療の試み』(マリア・クリニック院長 柏崎良子 著/株式会社ヨーゼフ)では、急激な血糖値の上昇後、反動で低血糖状態になったときに引き起こされる心身の症状として、次のようなものを挙げています。
- イライラする・癇癪・怒りっぽくなる
- 衝動的・暴力的になる
- 感情の抑制ができない(キレやすい)・パニックを起こしやすい
- 不安や恐怖、焦りを強く感じる
- 夜の不眠と日中(特に食後)の眠気
血糖値が安定すると、上記の症状も改善する可能性があるそうです。
3. アレルゲンフリー食事療法
フードアレルギー(食べたものに対して、体が反応するアレルギー)を調べ、反応の出るものを除去していく方法です。
フードアレルギーには、以下の2種類があります。
- すぐに反応のでる即時型
- 食べてから数時間〜数週間して反応する遅延型
即時型の場合は、食べた直後に皮膚のかゆみや湿疹などの反応が表れるため見つけやすく、親御さんも意識して除去していることが多いです。
一方、遅延型アレルギーの場合、気付かず摂取し続けていることがほとんどで、発達障害を含む様々な症状の原因になっていることがあります。(検査方法は後述します)
アレルゲンの除去による以下のような症状の改善例が、書籍『アレルギーは「砂糖」をやめれば良くなる!』(溝口 徹 著/青春出版社)に紹介されています。
- 不眠や疲労感
- 落ち着きがない など
4. 抗イースト食事療法
腸で発酵しやすい食材を除去する方法です。
腸内に常に存在している菌の一つである、カンジダ菌。腸内環境が乱れることで、カンジダ菌が増殖すると、下痢・便秘・イライラ・多動・集中力の低下といった悪影響を及ぼします。
抗イースト食事療法は、カンジダ菌を増やす食材を除去し、腸内環境を整える食事法です。
除去する食材は、精製食材、人工甘味料・香料・保存料、チョコ、乳製品、イースト菌など。豆類や玄米などを積極的に取ります。
改善が期待できる世界の食事療法
日本にも世界にも、発達障害のために考案されたわけではなくとも、食事から心と体を整える療法はいくつもあります。
これらを完璧に取り入れるのはハードルが高いですが、「食事で心身を整える」という視点は発達障害向けの食事療法と共通なので、知っておくと役立つことが多いでしょう。
自然療法
人間が本来持っている自然治癒力を高めることで健康な身体をサポートする療法です。
ハーブやアロマも自然療法の一つ。薬に頼らず、栄養指導やサプリメントで必要な栄養素を補う栄養療法も、自然療法の一種といえます。
マクロビオティック
玄米菜食をベースとし、陰陽の理論を取り入れた食事。
精製された砂糖は使わず、玄米や雑穀、全粒粉の小麦製品を主食とします。肉類・乳製品も基本的に使用しません。
食事療法というよりは、「一物全体」「身土不二」「陰陽調和」などの独自の理論を持ち、生活そのものを変えていくという思想的な一面もあります。
この他にも、アーユルヴェーダ、薬膳など、食事から体を整える手法は古くからたくさん存在します。しかし、すべてを完璧に取り入れようとすると、日々食事を作る親の労力ははかりしれず、食べるものがなくなってしまうでしょう。
なんでもかでも取り入れるのではなく、まずはお子さまにとって除去すべきもの、足らないものを正しく調べることが重要です。
家庭ですぐにできる!食事療法を意識した取り組み方と参考レシピ
食事は毎日のことなので、徹底的に取り組むというのはなかなか難しいものです。「部分的に取り入れる」など、できる範囲で緩く始めて欲しいと思います。
この章では、ご紹介した食事療法を踏まえて、家庭で簡単にできる食事改善の取り組み方をお伝えします。
小麦に代わる食材を使う
家にある小麦粉を、米粉や大豆粉などに置き換えてみましょう。たったこれだけでも、小麦の使用頻度が減り、グルテンフリーの食生活に近づけることができます。
昨今、グルテンフリー食材はスーパーの棚にも普通に並ぶようになり、口に合うものも見つけやすくなっています。カレーやシチューのルー、うどんやパスタ等の麺類、どんなグルテンフリー食材があるか、楽しみながら探してみてください。家庭でよく使う食材の一つをグルテンフリーにしてみるなど、できることを見つけて取り組んでいきましょう。
乳製品に代わる食材を使う
カゼインフリーを意識するなら、牛乳やヨーグルトといった乳製品を他の食材に置き換えます。
牛乳の代替としては、豆乳、ライスミルク、アーモンドミルク、オーツミルクなど、様々な植物由来の乳製品があります。ヨーグルトも、豆乳やアーモンドミルクのヨーグルトなどがあり、置き替えしやすいですね。
お子さんが抵抗なく受け入れてくれるものを、使ってみましょう。
添加物の少ない食材を選ぶ
食材添加物たっぷりの食材よりも、少ない食材の方がいい。これを意識している人は多いかもしれません。
人工の保存料や着色料、発色剤、甘味料などは、腸内環境を乱す原因の一つと言われています。できるだけ減らせるような食材選びをしましょう。まずは食材パッケージ裏の原材料をチェックして、添加物の少ないものを選ぶ、といったことから始めてみてください。
難しい添加物の名前を覚える必要は全くありませんが、どんな添加物があるのか理解したいという場合は、書籍を一冊持っておくといいかもしれません。気になる添加物を目にしたときに、ちょこっと調べるなど、食材選びの助けになります。
参考図書:『食品添加物ハンドブック』(渡辺 雄二 著/ビジネス社)
精製度の低い食材を取り入れる
精製度の低い食材を取り入れてみるのも一つです。
精製度を高めていくと混合物が減り、純物質へと近づくのですが、この工程でビタミンやミネラル類も一緒に除去されてしまいます。そのため、精製度が高いものほど、本来持っていた栄養素の含有量が低くなるのです。
例えば砂糖やお米。精製度の低い黒糖やきび砂糖、てんさい糖には、カルシウムや鉄分といったミネラルが豊富ですが、精製度の高い白砂糖は、こういったミネラル分はほとんど残っていません。
お米も同様です。玄米にはビタミンやミネラル、食物繊維が豊富な一方、完全に精米されたお米は、栄養素の多くが含まれている糠層の部分が取り除かれているため、ビタミンやミネラルの含有量は低くなっています。
精製度の低い食材には、その素材が本来持つ栄養素が丸ごと含まれています。今の食材が切れたタイミングなどで、買い足してみてはいかがでしょうか。玄米を取り入れる場合は、発芽玄米が腸にもやさしくおすすめです。
まごわやさしいを意識して食材を選ぶ
「子どもの体に良いものを食べさせたいけど、何を作ればいいの?」と迷ったときの合言葉として、「まごわやさしいこ」をご紹介します。
献立を考えるときに、次の8つの食材を意識してみましょう。これをカバーできれば、バランスの取れた理想的な食事作りができます。
まごわやさしいこ
ま・・・豆類(大豆、小豆、ひよこ豆 など)
ご・・・ごまなどの種実類(くるみ、アーモンド、くり など)
わ・・・わかめなどの海藻類
や・・・野菜類
さ・・・魚介類
し・・・しいたけなどのキノコ類
い・・・いも類
こ・・・酵素、発酵食品(味噌、しょう油、納豆 など)
「1食で全部網羅しよう!」と頑張りすぎず、1日や数日単位で献立を考えるなど、ご自身のできるペースで取り組んでください。
不足しがちな栄養素も意識しておく
「まごわやさしいこ」の食事作りに慣れてきたら、下記の栄養素を積極的に取ることも意識してみましょう。心や体が疲れやすい発達障害の子には、特に不足しがちな栄養素です。
- ビタミンB
- カルシウム
- オメガ3
この3つの栄養素については、こちらの記事で詳しく解説していますので、参考にしてください。
代替食材やまごわやさしいこを意識した参考レシピ
ご紹介してきた食事療法を意識したレシピを、いくつかご紹介します。発達障害専門の管理栄養士 小林浩子先生の調理動画で、細かな手順を確認できます。
グルテンフリー玄米粉カレー
ルーに玄米粉を使った、グルテンフリーカレーです。
動画で使われている材料
- 大豆ミート
- しょうが
- にんにく
- 玉ねぎ
- にんじん
- じゃがいも
- 野菜ブイヨン
- 塩
- しょうゆ
- アガベシロップ
- カレー粉
- 玄米粉
- 米油
作り方
A
- 大豆ミートは水で戻しておく
- 米油で生姜とにんにくを炒める
- 玉ねぎを加えて蒸し焼き → にんじんを追加して蒸し焼き → じゃがいもを加えて蒸し焼きの順に進める
- 大豆ミートと水を加える
- 野菜ブイヨンを入れて煮込む
B
- フライパンに、米油、カレー粉、玄米粉を入れて混ぜ合わせる
- 水を少しずつ入れて、ルーをのばす
- Aにルーを入れ、塩、しょう油を加えて煮込む
- 味見をしながら、アガベシロップで甘みを加える
画像のように海藻やキノコを使ったサラダを付け合わせれば、「まごはやさしいこ」のほとんどを網羅できます。
「まごはやさしいこ」を意識して、ドレッシングにえごま油を使う、サラダにツナ缶やじゃこを追加するなど、自分なりのアレンジができそうですね。
とうふハンバーグとひじきの煮つけ
木綿豆腐を使った体にやさしいハンバーグです。たねにはえのきも加えてあり、食物繊維も取れます。
動画で使われている材料
<とうふハンバーグ>
- 水切りした木綿豆腐 1丁
- 合挽き肉 300〜400g(しょうゆ大さじ2、みりん大さじ2で混ぜておく)
- えのき 1/2袋(細かく切っておく)
- 塩 小さじ1/2
- かたくりこ 大さじ1
- 米油 大さじ1〜(炒めるとき)
<ひじきの煮付け>
- 乾燥ひじき 15gぐらい(水で戻しておく)
- にんじん 少量(千切り)
- えのき 1/2袋(ざく切り)
- 大豆の水煮 1/2袋
- 米油 大さじ1
- しょうゆ 大さじ1
- みりん 大さじ1
- 酒 大さじ1
- だし汁 適量
作り方
ひじき煮からスタート
- ひじきとえのきを炒める
- 調味料を加えてさらに炒め、大豆を加える
- だし汁を入れて、煮汁がなくなるくらいまで煮る
豆腐ハンバーグ
- ひき肉に塩を加えて混ぜる
- 水切りした豆腐を加えて混ぜる
- えのきを加えてさらに混ぜたら、成型して焼く
バナナココアケーキ
ラカントSという糖質オフの自然甘味料を使ったバナナココアケーキ。ケーキの底に敷いた玄米パフがアクセントになっています。
動画で使われている材料
- バナナ 250~300g
- アーモンドパウダー 100g
- 黒ごまきなこパウダー 50g
- ココアパウダー 20g
- ラカントS 100g
- プルーン 85g
- 米油 20g
- 玄米パフ 約40g
- 無調整豆乳 大さじ5
- スライスアーモンド 25g
*動画内のケーキ型は直径22㎝くらいのものを使っています。
作り方
- すりつぶしたバナナにアーモンドパウダーを加えて混ぜる
- ココアパウダーと黒ごまきなこパウダーを追加して混ぜる
- ラカントSを加えて混ぜる
- 刻んだプルーン、米油の順に加えて混ぜる
- 玄米パフを砕き、豆乳と合わせる
- クッキングペーパーを敷いたケーキ型に、玄米パフを敷き、ケーキ生地を流す
- アーモンドスライスを散らし、180度のオーブンで30~35分くらい焼く
子どもの体の状態を知る方法
ご紹介した食事療法は、堅苦しく考えることなく家庭で気軽に取り組めます。これに加えて、何かしらの検査を受けてデータを得ることで、子どもの体の状態をより正確に知ることができます。
食事改善を進める上で参考にできるデータが欲しいという方は、一度受けてみるといいかもしれません。
ポピュラーなのは、次のような検査です。
毛髪検査
毛髪や爪を分析することで、体内にある必要な栄養素(カルシウム、マグネシウム、鉄など)の過不足と、有害重金属(水銀、ヒ素、鉛など)の残留を検査します。
採血などと違って痛みを伴わないため、小さな子でも安心です。
検査機関はいくつかあり、ネットで気軽に頼めるものもありますが、種類や費用によって多少の違いがあります。
画像は、都内のクリニックで、毛髪検査を行ったお子さんの親御さんから提供いただいたデータです。
毛髪サンプルを郵送すると、検査結果と解説が送られてくるシステムで、費用は約12,000円とのこと。
■検査結果の一部(当時4歳・男の子)
ビタミン・ミネラルや重金属類の数値に加え、グルテン不耐などの指数も示されています。
ペプチド検査
尿中のペプチド(グリアドーフィン、カゾモーフィン)の濃度を調べます。前述したカンジダ菌などの増殖により腸壁が損傷している場合、これらのペプチドが腸から血液中に入り、脳に到達することで、様々な不調を引き起こすと言われています。
濃度が高い場合は、グルテン・カゼインフリーで腸内環境を整え、必要な栄養素を食事やサプリメントで補給するなどの治療法になります。
こちらも医療機関での検査・治療をおすすめします。
IgGフードアレルギー検査
「IgGフードアレルギー検査」は、数時間~数日かけてあらわれる遅延型アレルギーの原因を特定するため検査です。
こちらは血液検査が必要ですが、採取量はわずかで済みますので、通常のアレルギー検査で原因が分からないときは試してみるのもひとつの方法です。
クリニックまたはインターネットでサンプルの血液を郵送すると、2~3週間で分析結果が届きます。
費用はいずれも30,000円ほどかかります。
前述の4歳のお子さまが検査をしたところ、アレルゲンは何も見つからなかったとのこと。
■検査結果の一部(4歳・男の子)。全部でこの倍ほどの検査項目があったそうです。
ご紹介した検査を行っているクリニックは、インターネット検索で探すことができます。
除去・誘発食事法
上記のような検査をしているクリニックは首都圏に集中していることが多く、地域によっては探すのも一苦労かもしれません。
そんな時には「除去・誘発食事法」というものもあります。時間と観察力が必要ですが、遠方まで通院しなくても調べられるのがメリット。こちらも医師の指示のもとで行うことをおすすめします。
以下は、実際に4歳のお子さんと親御さんが2週間グルテンを除去し、その後少しずつ食べてみた時の経過と感想です。あくまでも一例ですが、この親子の場合は、様々な心身の変化が表れているのが分かります。
事例)発達障害のある男の子(4歳)と母親が2週間グルテンを除去した結果と感想
息子はクリニックの毛髪検査でグルテン不耐性の数値が出たので、まずは小麦粉を使った製品を抜きました。現在も、完全ではありませんが極力控えています。
私自身は検査をしていませんでしたが、試しにグルテン・カゼインフリーをやってみました。
【除去段階】毎日のように取っていたパン・パスタ・バター・牛乳・ヨーグルト・お菓子を2週間やめる
→3日目ぐらいから目覚めがよく、睡眠時間が少なくてもスッキリと起きれる。イライラしない。体が軽い。見た目にわかるぐらい痩せる。
【誘発段階】パンを食べてみる。
→パンが食道を通るのがわかる感覚。胸焼け。食べた後、眠気に襲われる。胃が重い。
食事療法に取り組むときに大切な心構え
冒頭で、食事療法の基本は、
- 足りていない栄養素を足す
- 良くない影響を与えているものを除去する
とお話ししました。
しかし、上記を同時にスタートさせるのはかなりの負担。
体質改善はすぐには進まないことが多いので、急いで解決しようとせず、長い目で見た方が負担も少なく、続けやすいと言えます。
以下は、除去と栄養補給を同時に進めてみた親御さんの感想です。
事例)除去と栄養補給を同時進行した体験談と感想
息子の発達障害を改善するためにクリニックにかかったときの流れは、検査後に、
- 良くない影響のある食品を除去
- 栄養指導で食事の改善
- サプリで足りない栄養を補給
を同時に行うというものでした。
ある日突然、食生活を一変させなくてはいけない・・という状況ですが、これが体力的にも、精神的にも、金銭的にもとても大変で、3ヶ月ぐらいしか続きませんでした。
それで子どもが大幅に改善したか?というと、正直良くわかりません。(他にも同時進行で色々やっていたので)
個人差はあるのですが、サプリメントによる栄養補給は、人によって効果がでるのに半年以上はかかるとも言われました。
除去もしかり・・でしょう。
なので、発達障害の食事療法を行うなら、長期的な視野で見ていくことが大切なのかな、と思っています。
徹底的に行うのも一つのやり方ですが、この親御さんが仰るように、体力的・精神的・経済的な負担が伴うのも事実です。
食事改善は、ゆるくてよいので、なるべく途切れずに継続することが肝心です。次にお伝えするコツを頭に置きながら、長く続けていきましょう。
食事療法を長く続けるコツ
根気のいる食事療法を長く続けるには、ちょっとしたコツが必要。次にいくつかのポイントをご紹介します。
親も一緒に食事療法の効果を体感してみる
特に除去は、体に与える影響を自分が実感できると、長く続けることができます。グルテンフリーは比較的取り入れやすく、女性は美肌やダイエットを目的に取り入れている人もいますので、自分のためにと思って試しにやってみるといいでしょう。
子どもの状態を正しく知る
今はネットや書籍でいろいろな情報が手に入ります。でも、食事療法は”治療”の分野でもあります。個人的推測ではなく、医療機関の正しい検査結果を元に進めていくのが、安全かつ効率的でもあります。
食事療法による子どもの変化をメモで残しておく
長く続けるには、子どもの小さな変化を見逃さないことです。
ただ、毎日見ていると悪いところばかり目につき、「こんなに頑張っているのにどうして・・?」と諦めがちです。
そんなとき、簡単で良いので、お子さまの問題行動やできるようなったことをメモに残しておくといいです。こちらも毎日だと大変ですから、冷蔵庫などに貼って気付いたらメモする・・ぐらいのつもりで。
親子に会った食事療法を見つける
親子によって取り入れやすいものは違います。
グルテン除去がハマる方もいれば、サプリメントが合う方もいます。糖質制限がやりやすい方、玄米にしたら家族全員調子良くなった・・などなど。
人によって合うものは様々。合うものは続きます。試行錯誤しながら、家族全員が無理なく続けられるものを見つけてください。
食事療法の正しい理解と信じる気持ち
食事療法を行うときには、親御さん自身が正しく理解し、本当によいと思って初めて成立します。
サプリメントも「本当にこれは効くのだろうか?」と疑問を持ちながら与えるのと、「これはあなたの心と体をぐーんと軽くするものだよ」と言って与えるのとでは、効き目や体感が違ってくるはず。
自信を持ってお子さんと一緒に食事療法を進めていきましょう。
子どもの意思を尊重することも忘れずに
食事療法はゆるく長く続けることが大事ですとお伝えしました。幼児期や小学生くらいまでは、素直にお母さんの作った食事を食べてくれることが多く、取り組みやすいです。
しかし思春期以降の年齢になると、お子さんによっては、「体にいいよ」と言っても反発される・・・なんてことがあるかもしれません。
「菓子パンが食べたい!」「そこまでして健康になりたくない!」とお子さんに反発された、中学生の親御さんもいます。
子どもの意思を尊重し、本人が食べたいものを楽しむことも大事ですよね。上手くいかない時期があっても、お母さんの基本方針は忘れずに、子どもの声に応えながら、細く長く続けていきましょう。
家庭で無理なく取り入れる「発達障害の食事療法」を学ぶには
この記事監修の管理栄養士 小林浩子先生が作った、1日3時間で食事療法と偏食について学べる講座【子どもの発達支援基礎講座 偏食と食事療法】では、食事療法とは?という基本から、発達障害の子どもに足りない栄養素、毎日の食事に無理なく食事療法を取り入れられる基本を学ぶことができます。
まとめ
一言に発達障害の食事療法といっても様々なものがあります。
ストイックに短期間でやるのもいいのですが、やはり長期的な視野で、長く・ゆるく・楽しみながら続けていくことが大切です。
食の知識は、一生モノ。
難しく捉えるのではなく、毎日の生活習慣の一つとして、大きな目線で取り組んでみてください。
「気づいたらよくなっていた」
そんな変化が、お子さまに訪れることを願います。
監修:発達障害専門管理栄養士 小林浩子
神奈川県在住。
自閉症スペクトラムの娘、アスペルガー症候群の息子を育てている母として、娘の超偏食で精神的にとても苦労した経験から、同じように悩むお母様の役に立ちたいと活動をスタート。発達障害のための料理教室、成人の発達障害のための栄養講座、自立のための料理の視覚支援など、発達障害専門の管理栄養士として、広く活躍している。
発達凸凹アカデミーでは「偏食と食事療法」講座の企画・開発を担当。発達障害の子どもに必要な栄養素や家庭で気軽に取り入れる方法、食べない子どもに寄り添う支援方法などを伝えている。
著書「食事を変えてラクラク解決!脱うつレシピ」(三空出版)