「発達障害のある子が小学校に入学する前に、準備しておくと良いことはあるかな」
「学校にサポートブックを渡したいけれど、どうやって作ればよいのだろう」
発達に凸凹のあるお子さんが就学を迎えるこの時期、新しい環境への期待が膨らみますね。
同時に、多くの親御さんは「学校で楽しくすごせるだろうか。上手くやっていけるだろうか」といった不安も抱えていることと思います。
スムーズな学校生活が送れるように、してあげられることの一つとして、サポートブックの作成があります。
サポートブックは必須のものではありませんが、学校と情報共有する上で役立ち、子どももより適した支援を受けやすくなります。
この記事では、サポートブックの作り方や書き方のコツ、渡すときの心構え等を、発達障害がある小学生男子を子育て中の筆者の体験も踏まえながら、お伝えしています。
これからサポートブックを作りたいとお考えの親御さんに、少しでも参考になれば幸いです。
- 1. サポートブックとはどんなもの?
- 2. サポートブックはグレーゾーンの子にも役立つ
- 3. サポートブックの作り方
- 3.1. テンプレートを用意する
- 3.2. 伝える項目を決める
- 3.3. 項目内容を記入する
- 4. サポートブックの書き方4つのコツ
- 4.1. 1. 内容を絞ってページ数を少な目にする
- 4.2. 2. 特性と手立てはワンセットに
- 4.3. 3. 家で行っている手立てを伝えるとなお良い
- 4.4. 4. 可能なら第3者に見てもらうとよい
- 5. サポートブックには表紙をつけると安心
- 6. サポートブックはいつ渡す?いつまで渡す?
- 7. サポートブックを渡す際の心構え
- 8. サポートブックを作るメリット
- 8.1. 情報をより正確に伝えられる
- 8.2. 書面で提出した事実により、配慮を受けやすくなる場合もある
- 8.3. 他の機関でも使える
- 8.4. 記録を残すことで客観視できるようになり、子どもの成長を実感しやすい
- 9. 使いやすい支援ワークブックのご紹介
- 10. まとめ
サポートブックとはどんなもの?
「サポートブックを実際に見たことがなくて、イメージが湧かない」という方のために、まずは簡単に、サポートブックとはどのようなものか?をお伝えします。
サポートブックとは、お子さんを知ってもらうための、ガイドブックのようなもの。
本人の特性と、それによって学校生活で必要になるサポート内容を中心に、情報をまとめたものになります。
学校という大きな集団の中で、発達凸凹が大きな子はときとして、全体から遅れをとってしまったり、はみ出してしまったりということがあります。
そんなときに、どう支援すると子どもが乗り越えられるか、保護者だからこそ分かっているサポート方法を伝え、先生方に役立ててもらうことが、サポートブックの役割です。
サポートブックを上手く活かしてくれるかどうかは、先生次第という面もあります。
しかし私の経験上ほとんどの先生は、サポートブックを渡すことで、その子について理解しよう、適切な手助けをしようという前向きな姿勢を示してくれます。
サポートブックはグレーゾーンの子にも役立つ
サポートブックは普通級に通うグレーゾーンのお子さんにも役立ちます。
支援学校や支援クラスに通うお子さんの場合は、先生方も最初からサポートするつもりでいます。でも、普通級でとなると難しい。30人以上いるクラスの中で、先生の目が行き届かないことが多いのも実情です。
ですので、むしろグレーゾーンの子こそ、保護者がしっかりと学校に伝えていくことが大事なのです。
「子どもはグレーゾーンだけど、学校生活は心配な点がある」という親御さんは、サポートブックを活用してみるのが良いと思います。
最初の作成は少し時間がかかりますが、一度作っておけば、それをもとに更新していくこともできます。次の章を参考に、作ってみましょう。
サポートブックの作り方
サポートブックの主な作成手順は、以下の3つです。
- テンプレートを用意する
- 学校に伝える項目を決める
- 項目内容を記入する
テンプレートを用意する
サポートブックは、学校からのお便りサイズと同じ、A4サイズで作成しておくと無難です。
最初はテンプレートの用意です。ネットで検索すると、サポートブックのテンプレートや記入例がたくさん見つかりますので、いくつかチェックしてみてください。
色んなサンプルを目にしていくうちに、「どのような項目があるのか」「どのように書けばいいのか」ということが分かり、全体のイメージがつかめてきます。
一例として、LITALICOから提供されているサポートブックのリンク先をご紹介しておきます。
また、自治体がサポートブックのテンプレートを用意している場合もあるので、お住まいの自治体が配布していないか、チェックしてみるのもよいでしょう。
こちらも一例として、横浜市青葉区が配布しているサポートブックのリンク先をご紹介します。
青葉区のテンプレートは項目が多岐に渡っていますが、学校用に作る場合はここまで詳細に書く必要はありません。ここではイメージをつかむ目的で、眺めておいてください。
なんとなくイメージがつかめたら、実際に作成する方法は2通りです。
- 気に入ったテンプレートをダウンロードし、そのまま使う。
- テンプレートを参考に、ワードやエクセルを使って自分で作成する。
パソコン作業に抵抗がない人なら、自由に編集できる2の方法がおすすめです。次の章を参考にしながら、まとめてみてください。
伝える項目を決める
サポートブックに書く項目には、次のようなものがあります。
サポートブックに記載する項目例
- 氏名、生年月日などの基本情報
- 発達のかかりつけ医がいる場合は、その連絡先と大まかな受診内容
- 支援センターなどへ相談経験がある場合は、大まかな相談履歴
- 得意なことや好きなこと
- 苦手なことや嫌いなこと
- 本人の特性と有効な手立て
この他に、アレルギーや持病がある、手帳がある、発達テストを受けたことがある、という場合は、その情報を記載しておくと良いです。
項目内容を記入する
伝える項目を決めたら、書けるところから埋めていきましょう。
本人の特性をまとめるには、まず、お子さんの普段の様子を書き出してみましょう。次のようなポイントでまとめると進めやすいです。
お子さんの特性をまとめるときのポイント
- 行動面(切り替えの様子や衝動性、集団行動など)
- コミュニケーション面(本人からどうやって伝えているか、また他者からはどうやって理解しているかなど)
- 運動や身体面(手先の不器用さや体の動きのぎこちなさ、感覚の過敏性など)
「子どもの特性をどう表現したらよいか分からない」
そんなときは、例を参考にしましょう。テンプレートによっては、記入例も一緒に配布しているものもあります。「この特性はうちの子にも当てはまるな」という見本文があれば、その文章を借りるなり、自分なりに手を加えて使うなりしましょう。
一通り書き終わったら、誤字脱字のチェックも兼ねて、何度か自分でも読んでみます。「先生にちゃんと伝わるかな」と考えながら、見直しをしてみてください。
サポートブックの書き方4つのコツ
この章では、より活用しやすいサポートブックに仕上げるために、書き方のコツを4つご紹介します。
コツといっても、完璧である必要はありません。ここで書いてあることを、少し意識しているだけでも大丈夫です。
1. 内容を絞ってページ数を少な目にする
サポートブックは、できるだけ簡潔にまとめるのがおすすめです。
「過去に〇〇なことがありました。なので心配です」といった内容は避けましょう。
「〇〇な特性があります」、「学校では〇〇な手立てが有効です」というように、「今、伝える必要があること」に絞って書いていきます。
量の目安はA4用紙なら、2~3枚程度。先生が読む負担を考えれば、それ以上は多いと感じます。
小学校の支援教師をしていた方から、「1枚が理想的」と聞いたこともあります。もちろん、先生によって仰ることは違いますが、コンパクトにできるならその方が良い、というのが本当のところだと思います。
学校の先生は常に忙しいということを念頭に、「伝わりやすく書けているか」「情報が多すぎないか」そんなことも意識しながら書いてみてください。
2. 特性と手立てはワンセットに
「このような特性があります」と伝えるだけでは、その特性をどうサポートすればよいか分かりません。
特性をカバーする手立ても一緒に書きましょう。
例えば、「抽象的な言葉を理解できない」という特性があったとします。
この場合の必要な手立には、例えば
- 表現や指示は具体的に
- 『ちゃんと聞く』→『 〇〇の方を向いて聞く』のような表現
- 作業などの指示は、可能なら説明しながら手を添えて頂くと、より理解がスムーズ
などと書けます。もちろん、今実際に使っていて、お子さんに有効な手立てを書いてくださいね。
3. 家で行っている手立てを伝えるとなお良い
特性と手立てをワンセットで書けたら、家で行っていることの具体例も併せて伝えておくと良いです。
家でのサポート方法を伝えておくと、家庭のやり方を参考にしてもらえることもあれば、学校から「こんな風にしてみました」とお話を聞けることもあり、アイデア交換のきっかけになります。
また、「必要な支援は〇〇です。よろしくお願いします」とだけ書くよりも、「家庭でもこのような工夫をしてます」と書き添える方が、一方的な感じを与えず、「家庭と学校で一緒に子供を支えたい」という気持ちを感じ取ってもらえるのではないでしょうか。
4. 可能なら第3者に見てもらうとよい
専門家にチェックしてもらうと、「こんな書き方がよい」というアドバイスをもらえることもあります。
可能であればですが、療育先などに信頼できる人がいれば、伝わりやすい内容になっているか、見てもらうと心強いですね。
サポートブックには表紙をつけると安心
サポートブックには、表紙をつけることをおすすめします。
これは体裁を良くするというだけでなく、表紙をつけて簡単に覗けない状態にするという、プライバシー保護の目的もあります。
サポートブックは子どもの大切な個人情報です。提出先が学校であっても、自分でできる対策はしておくことをおすすめします。
表紙をつける他に、「サポートブックの内容が個人情報であり、取扱いを慎重にして欲しい」という旨を書き添えても良いと思います。私の場合は、表紙の片隅に「マル秘」のマークを付けました。
ここまですれば、サポートブックは完成です!
サポートブックはいつ渡す?いつまで渡す?
完成したサポートブックは、できれば入学前の春休み期間中に渡せると良いでしょう。
新学期が始まる前なら、先生方も比較的時間に余裕を持って、サポートブックに目を通すことができると思います。
入学後に渡す場合は、できるだけ早いタイミングで渡すようにしましょう。
渡す際は、面談の時間も作ってもらい、一緒に中身を確認しながらでもいいですし、「現在の様子で気になる点をまとめています」と伝え、渡すだけで帰ってきてもよいでしょう。
一度提出したサポートブックは、学年が上がったらどうすれば良いでしょうか。
私の経験上、継続的なサポートを望むなら、サポートブックも更新を続けていくのが好ましいと感じます。
小学校の場合、担任の先生は毎年変わるのが一般的です。新しい担任の先生との顔合わせをするという意味でも、年度初めには最新版を提出できると良いと思います。
もちろん、サポートブックが全てではありません。
サポートブックを使わなくても、学年が上がるタイミングで毎年面談をして、子どもの様子や支援方法について先生とすり合わせをしている保護者の方もいます。
大切なのは、切れ目なく学校と繋がっておくことです。サポートブックにこだわりすぎずに、自分に合った方法で、学校と連携を続けられるといいですね。
サポートブックを渡す際の心構え
サポートブックを渡せば、こちらが期待するような配慮を受けられるのかというと、必ずしもそうではありません。
あれこれ工夫してくれる先生もいれば、こちらの意図があまり伝わってないのかな。。という先生に出会うこともあります。
ですが、学校がどんな対応であっても、サポートブックを提出すること自体は、決してマイナスにはなりません。
最善を尽くした後は、「サポートしてくれているだろうか?」ということは期待しすぎず、子どもの日々の様子を見守っていくのみです。「あれ?」と思うことがあれば、その都度相談していきましょう。
サポートブックを作るメリット
サポートブックは、最初こそ作業に少し時間がかかりますが、振り返ると「あのとき作っておいて良かった」と思えます。
この章では、サポートブックを作成して感じたメリットを、いくつかご紹介します。
情報をより正確に伝えられる
学校の先生に限らず、誰かと話をする際に、口頭のみでは「自分の言いたいことを思うように伝えられなかった」という経験をしたことはないでしょうか。
口頭だけで話をするよりも、サポートブックを用いながらの方が、伝えたい内容をより正確に相手に伝えられる、というメリットがあります。
書面で提出した事実により、配慮を受けやすくなる場合もある
これは特に、お子さんが普通級に通っている場合での話になりますが、サポートブックを提出しているという事実があると、先生に目を向けてもらいやすくなると感じます。
普通級で配慮をお願いしたい場合、保護者側からしっかり伝えていくことがとても大事です。こちらから何もせずに、学校側から働きかけてくれることはまずありません。勇気もいるし大変ですが、同じようなママはたくさんいますから、一緒にがんばりましょう。
他の機関でも使える
サポートブックを一つ作っておくと、医療機関や放課後等デイサービスといった、学校以外の場でも活用できます。
意外なところでは、習い事などでも役立ちます。最近は、発達障害のことを知ろうとしてくれる先生が増えているのか、自ら「何か役立つことがあれば教えて欲しい」と言ってくださる先生もいます。
習い事の場合は、学校に伝えるほどの情報量は必要ありません。レッスン中に役立ちそうな手立てや、効果的な言葉のかけ方などを共有しておくと良いです。
記録を残すことで客観視できるようになり、子どもの成長を実感しやすい
サポートブックを作ると、子どもの状態を客観視できるようになります。
自分の子どもを目の前にすると、どうしても感情が入ります。サポートブックを通してなら、子どもの様子を冷静に把握することができ、そのおかげで別の角度からのサポート方法が見つかることもあります。
それから、サポートブックに記録を残し続けることで、子どもの成長を実感しやすくなります。実はこれが一番のメリットかもしれません。
赤ちゃんの頃につけていた母子手帳のように、サポートブックも子どもの成長記録として、大切な宝物になります。
使いやすい支援ワークブックのご紹介
最後に、お子さんの就学に向けて、「サポートブックの準備と一緒に、効果的な支援について学んでおきたい」という方に役立つ、子ども発達障がい支援アドバイザー講座をご紹介します。
この講座は、生涯学習のユーキャンと発達凸凹アカデミーのコラボによって生れた通信講座です。副教材として、サポートブックとして活用できる支援ワークブックが附属しています。
支援ワークブックの使い方や記入方法は、講座のDVDでしっかり学習できます。支援方法を学んで学校と良い連携をしていきたいとお考えの方は、ユーキャンの公式サイトで講座の詳細もご覧ください。
まとめ
発達障害特性がある子の学校生活をスムーズなものにするには、学校との情報共有・連携がとても大事になってきます。
「入学前に先生に子どもの知ってもらいたい」「でもどう伝えたらいいのか迷う」そんな方は、サポートブックを介して情報共有する方法を試してみてください。
文字に起こしたサポートブックは、口頭で伝えるだけよりもしっかりと情報を伝えられ、より適した支援が望めます。また、サポートブックをまとめる作業は、親自身が子どもの状態を客観視できるよい機会にもなります。
お子さんが素敵な学校生活をスタートできますように。
この記事が少しでも参考になれば嬉しいです。