子供の癇癪について、悩んでいませんか?
「幼稚園や保育園では大丈夫なのに、家では一度泣き出すとなかなか止まらない」
「大きくなったら落ち着くと思っていたけど、ひどくなる一方で不安を感じている」
「子供が癇癪を起こすと怒鳴ってしまう。どうすればおさまるのか分からない」
「自分の育て方が悪いんじゃないかと自分を責めてしまう」
この記事ではそんなお母さんたちのために、2,000人の発達障害の子供をみてきた療育の専門家 浜田悦子先生による、子供の癇癪に最も効果的な対処方法、普段の生活で癇癪を起こさない・起こしにくくするための対策について紹介します。
実際にここにある方法で癇癪を起こさなくなり、自分で自分の気持ちをコントロールできるようになったお子さんが大勢います!
読み終わったときには、子供の癇癪が起きる原因や起こっている最中の対処方法、お母さん自身の心のもちようなどについて理解が深まり、たくさん共感していただけると思います。
- 1. 子供の癇癪とは?正しい癇癪の捉え方と考えられる原因3つ
- 1.1. 癇癪の具体的な状態と対処するときの正しい考え方
- 1.2. 癇癪を引き起こす原因3つ
- 1.2.1. ①生理的な原因
- 1.2.2. ②対人的な原因
- 1.2.3. ③発達障害に関する原因
- 2. 状態を悪化させないために知っておきたい癇癪の特徴
- 2.1. 癇癪は刺激を与えると増幅してしまう
- 2.2. 癇癪は繰り返すと強化されてしまう
- 3. 子供の癇癪をなくすための8項目:癇癪を起こす前・最中・後で解説
- 3.1. 癇癪を起こす前
- 3.1.1. ①子供を観察してメモを取り、癇癪の起きる原因を知る
- 3.1.2. ②メモの具体的な取り方とその理由
- 3.2. 癇癪を起こしている最中
- 3.2.1. ③癇癪の最中は無反応を徹底する
- 3.2.2. ④無反応は無視ではなく見て見ぬふり
- 3.2.3. ⑤子供が自分自身に折り合いをつけている間は邪魔をしない
- 3.3. 癇癪がおさまった後
- 3.3.1. ⑥共感する
- 3.3.2. ⑦お説教はしない
- 3.3.3. ⑧引き続き観察し、メモを取る
- 4. 子供が癇癪を起こさないためにできる6つのこと
- 4.1. ①子供の嫌いなもの、苦手なものを知る
- 4.2. ②子供のこだわりを知る
- 4.3. ③子供が見通しの立てやすい言葉かけをする
- 4.4. ④視覚的な指示をしてみる
- 4.5. ⑤現在のリズムや設定を少し変えて様子を見る
- 4.6. ⑥ルール(パターン)を決める
- 5. 子供の癇癪と向き合うママが大切にすべき2つのこと
- 5.1. ①自分への共感を忘れない
- 5.2. ②息抜きをする
- 6. まとめ
子供の癇癪とは?正しい癇癪の捉え方と考えられる原因3つ
こちらの章ではまず、子供の癇癪を知る上での基本的なポイントをお伝えします。
癇癪の具体的な状態と対処するときの正しい考え方
子供の癇癪は、具体的に次のような状態を指します。
- 大声(金切り声)を出し、泣きわめく
- 床に身体を投げ出し、海老ぞりになり、暴れる
- 物を手当たり次第に投げつける、手近にある物を叩きつけるなどして破壊する
- 周囲にいる人間(大人、子供問わず)を殴る、蹴るなど他害行動を取る
- 自分を叩く、頭を打ち付けるなど自傷行動を起こす
癇癪は子供にとって不都合な何かがきっかけとなり起こります。子供によりきっかけは様々ですが、思い通りにならないことに対する、子供からの信号発信と考えられています。
一方で、その「不都合な何か」が取り払われたからといって、すぐに癇癪がおさまらないこともよくあります。これは、子供自身が怒りや悲しみ、理不尽さへのネガティブな感情をコントロールしきれていないからだといわれています。
ここでみなさんに、お子さんの癇癪について考えるときに、常に心に留めておいて頂きたいことがあります。
- 癇癪には必ず原因がある
- 癇癪に対処するときは原因とセットで考える
この2点です。
ただ単に癇癪をおさめる対処をするのではなく、癇癪につながる原因に対処していく。この考え方をもとに関わっていくと、効果的な対処につながります。
癇癪を引き起こす原因3つ
癇癪を引き起こす原因には、主に以下の3つがあります。
①生理的な原因
おもに乳幼児など、言葉が未発達な場合は、「お腹が空いた」「オムツが濡れて不快」などの生理的な要因により、泣いたりわめいたりして感情を表します。それが癇癪のようにあらわれる場合もあります。これはごく自然な赤ちゃんの感情の表れ、成長の過程にあらわれる状態といえるでしょう。
一方で、言葉を覚え始めた幼児期になってから「頭が痛い」「喉が渇いた」というような比較的単純な感覚から、「肌に服の布地があたって不快」「部屋が明るすぎる」など、五感への刺激が不快に感じ、それをうまく伝えられずに泣きわめく場合があります。このとき、言葉で伝えながらも感情をコントロールできず、癇癪を起こしている場合もあります。
②対人的な原因
幼稚園や保育園に入る前後からは、他者との関わりにおいて、自分の要求が通らない場合に癇癪を起こすことがあります。この場合の「他者」は、家族や友達から全くの他人まで広い範囲にわたります。
上記①②に共通するのは、自分の欲求が満たされないことへの不満、不快感から起きるということです。
ただし、継続化やパターン化してしまっている癇癪の場合だと、原因やきっかけとは別に、引き起こされた癇癪のコントロールができなくなり悪化していることがあります。
③発達障害に関する原因
自閉症やADHDなど、発達障害と診断されている、もしくはその傾向のある子供(グレーゾーン)の場合、意思の疎通や言葉の遅れ、他者とのコミュニケーションの難しさから自分のしたいことや欲しいもの、要求を伝えきれずに癇癪を起こす場合があります。
状態を悪化させないために知っておきたい癇癪の特徴
癇癪の持つ特徴についても見ていきましょう。
癇癪には次のような2つの特徴があります。癇癪を悪化させないために重要な点ですので、ぜひ知っておいて欲しいと思います。
癇癪は刺激を与えると増幅してしまう
一つ目は、癇癪は刺激を受けると増幅する、ということ。
ここでいう「刺激」とは、特別な感覚ではありません。私たちが五感で感じ、受け取れる外部情報を指します。
- 目に見える(視覚)
- 聴こえる(聴覚)
- 触れる(触覚)
- 味わう(味覚)
- 匂う(嗅覚・臭覚)
この他に
- 気温や湿度など(体感)
これら外界との接触は、感覚として神経を通じ私たちの脳に伝わりますが、この全てが癇癪を起こしている子供にとっては、よりいっそう癇癪を増幅する「刺激」となってしまうのです。
例えば、癇癪を起こしていない通常の状態の大人であっても、真剣に考え事をしているときに、聞いてもいないことを横からあれこれ言われたらどう感じるでしょうか。集中を妨げられ、煩わしくなるのが普通でしょう。「嫌だ」「不快だ」と感じるのではないでしょうか?
癇癪を起こしている子供にとっては、この状態の何倍、何十倍も苦しい状態が起きていると考えられます。
例えば、癇癪を起こしている子供をおとなしくさせようとお母さんがその腕を掴み、目を見つめて、大きな声で慰めたり、説得したりした場合は
- 「声、言葉」=聴覚への刺激
- 「視線」=視覚への刺激
- 「拘束」=触覚への刺激
これらが子供に与えられることになります。これらの「刺激」は癇癪を起こしてパニックになっている子供に伝わり、さらに苦しい状態をつくり上げます。
たとえそれが大好きなお母さんの声や視線だとしても、「不快な刺激」となって、よりいっそう状況を悪化させるのです。
ですので、癇癪を増幅させないためには、刺激を与えないような対応をとる必要があります。
癇癪は繰り返すと強化されてしまう
二つ目の特徴は、癇癪は繰り返すと強化されてしまう、という点です。
例えば、はじめから玉ねぎのみじん切りを上手にできる人はいませんよね。毎日繰り返し練習することでスピードが上がったり、細かく切ることができるようになったりします。
これは、苦手なことでも繰り返し練習しているうちにコツを掴み、やがてパターンとして認識され、スキルとして上達する、すなわち「強化」されていくということです(注:発達障害の場合は例外もあります)。
これと同じことが、癇癪をはじめとする「問題行動」の繰り返しでも起きている、と考えられています。
もしも毎日癇癪を起こしている子供がいるとすれば、それは日々癇癪を「練習」し、「強化」しているということです。
癇癪が強化されると、具体的には
- 癇癪の頻度が上がる
- 泣き方がもっと激しくなる
- 暴言や暴力が激しく出て来る
このような症状が見られます。
癇癪が練習・強化されていくにつれ、やがて次の段階(二次障害)になる可能性も高くなります。
ですので、癇癪などの問題行動を強化しないためには、繰り返さないことが非常に大切になります。そして繰り返しを避けるには、「癇癪が起こる前に対策をする」「癇癪の最中は正しい対応をする」必要があるのです。
子供の癇癪をなくすための8項目:癇癪を起こす前・最中・後で解説
実際に子供が癇癪を起こすと、親御さんたちは「何とかして落ち着かせなければ!」と考えてしまうのではないでしょうか?
子供を落ち着かせようと抱きしめたり、声をかけて励ましたり、色々試みるけれど…子供の癇癪は余計にひどくなり、最後には子供を怒鳴りつけてしまう。
この繰り返しに覚えがある方も多いのではないでしょうか。
しかし多くのお母さんたちがとっているであろうこの対応は、実はより癇癪を長引かせる間違った対処法と言えます。
なぜなら既にお伝えしたとおり、癇癪の最中に与える声や視線等すべてが子供にとって不快な刺激となり、症状を増幅してしまうため、癇癪をおさめるには逆効果だからです。
ここからは、子供が癇癪を起こしにくくするためにはどうすべきなのか、具体的な方法を「癇癪を起こす前」「癇癪を起こしている最中」「癇癪を起こした後」の3ステップに分けてお伝えします。
癇癪を起こす前
まず、癇癪を起こす前の対処法についてです。
①子供を観察してメモを取り、癇癪の起きる原因を知る
子供の癇癪をなくすためには、子供の観察が必要になります。
癇癪は「繰り返す」ことを避けなければなりません。10回癇癪が起きれば10回練習され、強化されていきます。回数を重ねると行動が定着していくため、癇癪が日常的にパターン化している場合も少なくないのです。
すでに練習と強化を繰り返してしまい、パターン化している場合は、「癇癪が起きている間は無反応を徹底する」ことから対策を始めていきますが、まだパターン化していない場合は、できるだけ癇癪を起こさせないようにすることが大切になってきます。
まずは、子供の行動を観察し統計をとることが不可欠です。
具体的には、子供が癇癪を起こす原因やタイミングを知るために、一定期間メモを取って癇癪時の記録を残し、その結果を整理します。
②メモの具体的な取り方とその理由
子供がどういうときに癇癪を起こすのか、癇癪のきっかけとなる事柄や行動手順、状況を把握するためにメモを取ります。
メモを取るのは面倒と感じるかもしれませんが、当サイト監修者である「おうち療育アドバイザー」浜田悦子先生のデータによると、メモ(記録と統計)を取っていた家庭のほうが、子供の癇癪の改善が多く見られています。
メモは、癇癪を起こした際の状況について以下のような項目を設定し、継続して取り続けます。
<状況>朝ごはん時
<癇癪の推測理由>朝ごはんを食べたくなかった?
<取った対処方法>無反応
<癇癪の継続時間>約〇分
<気づいたこと等>お腹がすいていない?もっと遅い時間がよいのかな?
これを続けることで、少しずつ「どういうときに癇癪が起きるのか」というのが見えてきます。
統計を取ることは、癇癪のパターンを見つけるためでもありますが、子育てがラクになるヒントを見つけることにもつながります。
例えば、いつも着替えのときに癇癪を起こすお子さんならば、「癇癪のきっかけ=着替え」ということから、さらにその奥にある理由や対応まで考察することができます。
- まだ一人で着替えることが難しいのかな?
- 触覚過敏があるのかな?
- 手順表(絵カード)を準備すればできるかな?
このように、様々な視点から子供を観察し、原因を探ることができるようになるのです。
メモを取ることは、手間のかかる遠回りな作業に見えて、実は確実に癇癪を軽減させやがて消失させるための一番近道の方法です。
統計を取っていくと、癇癪につながっている原因が見えてくるでしょう。
癇癪には、必ず「原因」があります。
もちろん、目に見えにくい場合もありますが、「メモと統計を長期に継続する」ことによって、必ず、癇癪の原因が見えるときがきます。
原因が分かれば、それを取り除くことで癇癪は確実に減っていきます。
癇癪を起こしている最中
続いて、癇癪を起こしている最中でのポイントをお伝えします。
③癇癪の最中は無反応を徹底する
癇癪を改善するためには、子供自身の力だけでは難しく、大人の適切なサポートが必要です。そして、癇癪を起こしている子供の周りにいる大人がすべきことは、「無反応」を徹底することです。
この対応をとるべき理由は2つあります。
1つ目の理由は、癇癪への「刺激」を極限まで減らすためです。
癇癪が起きている最中は、大好きなお母さんの声や言葉、視線、触れてくる手ですら「不快な刺激」になることはすでにお伝えしました。
癇癪を起こしている子供は、いわばパニック状態です。子供の意思で暴れているように見えますが、自分ではどうしようもない、よく分からない状態の中にいます。
五感で受ける全ての刺激が、癇癪を増幅させてしまう要因となるため、その刺激を与えない状況を作る必要があります。その最も効果的な方法が「無反応」という対処法なのです。
無反応とは「子供が感じ取れる言葉も視線も体感も一切かけない(与えない)」ということです。
自分で自分をコントロールできない状況の中にいる子供を、落ち着くまではそっとしておくことが最も大切です。
2つ目の理由は、癇癪を繰り返すことを回避するためです。
前章でお伝えした通り、癇癪は繰り返すことが練習となり、強化(=悪化)につながります。
無反応に徹して癇癪への刺激を減らすことで、子供は徐々に自分で自分をコントロールし、癇癪から立て直す(=落ち着きを取り戻す)ことができるようになります。このときの子どもは、落ち着きを取り戻す練習を繰り返すことで、自分自身をコントロールする力が強化されていく、という状態にいます。
<参考:ものを与えるのは逆効果!>
ものを与えて一時的にその場をおさめることはやめましょう。
ものを与えることで子供の癇癪が止むと、癇癪を収めるのに効果があると大人は考えてしまいますが、逆にそのこと自体も刺激になるうえに、「癇癪を起こす=ものがもらえる」という誤ったパターン認識をさせてしまい、かえって癇癪を悪化させることになります。
④無反応は無視ではなく見て見ぬふり
ただし、無反応=無視ではありません!
「無反応をする」とは、完全に無視することではありません。「見て見ぬふりをする」ということです。
子供に刺激を与えないためにと、子供を放置して外出してしまうことは危険ですので絶対にやめてください。
子供の様子を、必ず少し離れた場所から、横目で静かに観察しておくことが大切です(子供からは見えなくなる死角へ姿を消すことは、場合によってはオススメしています)。
見て見ぬふりをする理由は2つあります。
1つ目は、子供が癇癪を起こしている最中、命に係わる危険な行動を起こした際、すぐに駆けつけて止めるため。
2つ目は、癇癪が落ち着いてきたらすぐに子供に共感するためです。
くりかえしますが、無反応は、無視とは違います。
特に2つ目の「共感」があることで、子供は癇癪を起こしている自分のネガティブな気持ちに折り合いをつけ、立て直すことができるようになるのです。
⑤子供が自分自身に折り合いをつけている間は邪魔をしない
子供は癇癪を起こしている間に、つらい、不快だ、悲しいなどの様々な感情と葛藤しています。
ここで例えば、「静かにしなさい!」などと制止すると、その感情をしっかりと自分で味わい、子供自身が自分に折り合いをつける前に「刺激」が与えられ、興奮状態が余計に強くなります。
感情を落ち着かせるためには、癇癪を起こしている激情を十分に味合わせて納得させることが大切です。
そのためにも「無反応(=見てみぬふり)」を貫いてください。
癇癪がおさまった後
最後に、癇癪がおさまった後にする項目をお伝えします。
⑥共感する
子供が癇癪を起こし、周りの大人が無反応をすることで徐々に落ち着き、癇癪がおさまったときが、最も大切な時間です。
お母さんや大人はすぐに子供のそばに行きましょう。そして、子供に共感することが大切です。
共感とは、具体的には抱きしめたり、言葉をかけたりすることです。
くりかえしますが、癇癪の最中は「無反応」
癇癪がおさまってから「共感」をしてください。
例えば、スーパーでお菓子を買ってほしいと駄々をこね、癇癪を起こした子供は
- そのお菓子がほしい!
- そのお菓子を食べたい!
と、思っているはずです。
そのときの子供の気持ちを、そのまま代弁してあげましょう。具体的には
「(お菓子を)欲しかったね」
「食べたかったね」
「買えなくて、悲しかったね」
このように言葉をかけます。
この共感こそが、子供の心の成長につながります。お母さんや周りの大人の共感を経て、子供は自分自身の力で、自分の気持ちに折り合いをつけることができるようになるのです。
<参考:「落ち着きなさい」は子供が落ち着いた状態のときに言う>
「落ち着いているね」という言葉は、子供が落ち着いている状態で掛けてほしいと思います。何故なら「落ち着く」という言葉は抽象的なため、子供にはどういう意味なのか理解しづらいからです。
癇癪を起こしていたり、暴れている子供によく大人は「落ち着きなさい!」と注意してしまいます。しかし「落ち着く」とはどういう状況や状態を指すのか、子供は分からないのですから、「落ち着きなさい」と言われてもできるはずがありません。
実際に子供が落ち着いている状態のときに「今、あなたは落ち着いているんだよ」と声に出して言葉をかけることで、子供は「自分は今、落ち着いている」と理解できます。落ち着いている状態と言葉が一致するため、言葉を聞いて自分の感情や状態をコントロールして立て直すまでを、早くできるようになります。
これは癇癪の後だけでなく、普段子供が落ち着いている状態のときにも、折に触れて声かけしてあげることをオススメします。
⑦お説教はしない
癇癪を起こしたことや起こしている最中のことなど、くどくどとお説教をすることはやめましょう。そのことがまたネガティブな感覚を思い出させ、癇癪のきっかけになります。また、お説教のように話が長いと子供は内容を理解することができませんし、責められたと感じてしまいます。
お説教は、お母さん自身の『わかってほしい!』気持ちがあふれているため、せっかくの共感が台無しになります。もし何か教えたいことがあれば、お子さんの機嫌がいいとき、落ち着いているときにしましょう。
あくまでも、無反応によって子供が一人で感情を落ち着かせ立て直したことを受け入れ、共感することに徹してください。
⑧引き続き観察し、メモを取る
癇癪を起こす前にすべきことを続けます。
癇癪を起こしていないときの状態、癇癪を起こす場合のきっかけ、癇癪の継続時間や気付いたこと等を記録し、癇癪中には無反応を続けていきます。
次の章でお伝えする、癇癪を起こさないために心がけることを実践する際に、このメモが役立ちます。
子供が癇癪を起こさないためにできる6つのこと
子供によって、癇癪のスイッチは違います。勝負にこだわる子供は、勝つこと以外にも一番にこだわる。失敗に弱い子供は、遊んでいた積み木が崩れただけでも、癇癪につながることがあります。
子供によって異なるパターンを探し、事前に周りの環境や設定を変えることで、癇癪につながりにくくすることができます。
それでは、子供が癇癪を起こさないためにできる対策を見ていきましょう。
①子供の嫌いなもの、苦手なものを知る
食べ物の好き嫌いなどは分かりやすいですね。他にも、匂いや触感、明るさや音、広い意味では場所が急に変わるなどでも子供は嫌がることがあります。
例えば、いつもは3時になったら広いお部屋に移動して自由に遊べていたのに、その日は移動がなくそのまま帰宅となった場合などです。
子供が何を嫌がり、何を苦手としているか。普段からよく観察し、メモをしておくことで「癇癪のきっかけではないか?」と推測するのに役立ちます。
②子供のこだわりを知る
こだわりの強い子供がいます。例えば、絶対に決まった毛布でなければ眠れない、などはよく聞かれる話です。お気に入りのおもちゃを絶対に手放さない子供もいます。こだわりが強い子は、不安が強い子です。
毛布を洗濯する場合は理由を説明することももちろん大切ですが、言葉の理解が不十分な場合は、不要な癇癪が起きないよう、必要以上に洗わない、同じおもちゃを増やすなど、環境を整えてあげましょう。
③子供が見通しの立てやすい言葉かけをする
「このテレビが終わったら、お着替えをしようね」
などのように、次の行動が子供にみえやすいように、あらかじめ言葉かけをすることも大切です。次に何をするのか見通しが立っているとことで、気持ちを切り替えやすくなり、癇癪にもつながりにくくなります。
④視覚的な指示をしてみる
言葉かけに加えて、視覚に訴える方法が役立つこともあります。
例えば、絵カードなどで「次になにをするか」「今どんな気持ちなのか」を示し、意思疎通する方法があります。
これは発達障害の子供に有効な方法として知られていますが、言語が未発達な幼児の場合にも、状況をわかりやすく伝えることで見通しを立てたり、癇癪の原因となる不快なものを明らかにすることが可能です。
⑤現在のリズムや設定を少し変えて様子を見る
いつも同じタイミングでぐずりはじめたり癇癪を起こすなら、そのタイミングを少しずらして様子を見る方法があります。
例えば、いつも朝ごはんを7時半から食べていたとします。朝ごはんが始まるといつも癇癪を起こすなら、時間を少し遅らせて8時からにしてみましょう。それで癇癪を起こさなければ、その状態を続けましょう。
今のやり方で子供が不快に感じているなら、どうしても不都合な場合を除き、それをかたくなに守る必要はありません。臨機応変に、子供の状態を見て、少しずつタイミングやリズム、設定をずらして、子供の最も快適に感じる状況をつくってあげましょう。
⑥ルール(パターン)を決める
癇癪が起きていない間に、子供と一緒にルールを決めておきましょう。これは言葉がある程度理解できるようになった子供に有効です。
例えば、「すごく怒ってしまったとき、どうすればいいのか」と、子供が落ち着いているときに話し合います。これは「落ち着くとはどういうことか」を、落ち着いているときに説明するのと同じです。
それでも、実際に癇癪が起きているときに気持ちを抑えることは大人でも難しいことです。
そんなときは「怒ってしまったら、深呼吸を3回する」など、行動パターンを決めて実行してみる方法があります。
これは行動をパターン化、ルーチン化することで緊張から開放されるなど、プロスポーツ選手の間でも実際に行われている心理コントロール方法です。
何かひとつ、やりやすいことから決めて実行してみるとよいかもしれません。
子供の癇癪と向き合うママが大切にすべき2つのこと
癇癪を起こしている子供のエネルギーは凄まじいものがあります。
正しい対処法を知らない場合、泣きわめき暴れる子供に困り果て、やがて自分の感情も引きずられて混乱し、激情に支配されてしまうお母さんも多いのではないでしょうか。
ここでは、子供の癇癪と向き合って日々頑張っているお母さんたちへの共感についてお伝えします。
①自分への共感を忘れない
子供が癇癪を起こすこと、それをしずめられない自分に対して、辛い気持ちだけを持ってはいけません。
「子供が悪い!」
「いい加減にして!」
「なんで私ばっかり!」
こんなふうに怒りや悲しみなどのネガティブな感情でいっぱいになってしまうと、お母さん自身が精神的にも肉体的にも疲れ果ててしまいます。
癇癪は永遠に続くものではありません。疲れたときは子供よりも自分に目を向け、頑張って子育てしている自分を認めてください。
そして、できることから少しずつ始めましょう。
②息抜きをする
「いつまでも癇癪を起こしている我が子をどうしたらいいかわからず、ネットしか相談できる場所がない」
そんな人も多いのではないでしょうか。
同じような境遇の人は、実はたくさんいます!
ネットで相談することも気休めにはなりますが、直接同じ境遇の人たちと話をすることで、心が落ち着き、自分だけが苦しんでいるのではないと勇気づけられ、安心することができます。
また、自分の経験を話すことで、同じように悩んでいる人の役に立つこともできます。
もちろん、悩みを相談するばかりではなく、気晴らしで好きなことに打ち込む、旅行に行くなど、子育てに一点集中するのではなく、必要に応じて息抜きをすることを忘れないようにしましょう。
それによって、また子供と向き合い、共感し、一緒に成長することができます。
まとめ
子供の癇癪について、お話ししてきました。
癇癪は起きる前に対処をしておくことがまず第一に必要です。日頃から、子供がどういうときに癇癪を起こすのか、観察し、記録しておきましょう。
癇癪が起きてしまったら、お母さんをはじめとする保護者の方は「無反応」を徹底してください。子供が怒りや理不尽に対する苛立ちを感じている、その感情を味わっていることを妨げてはいけません。
癇癪が起きている最中は、お子さんと、お母さんをはじめとする保護者の方の身の安全を確保します。
無反応を貫くうちに子供が落ち着いたら、抱きしめたり言葉をかけてあげて、存分に共感してあげましょう。このとき、お説教は厳禁です。
癇癪の波が過ぎ去ったら、再度「どういうときに癇癪が起きるか」「何に対して苛立ちや不安を感じているのか」記録を取り続けましょう。
これを繰り返すことで、多くの場合、少しずつ子供の癇癪は症状が改善していきます。
ここで紹介した癇癪への対処法は、お子さんがどんなに大きくなっても遅いということはありません。
あきらめなければ必ず解決する日がきます。
実際に、ここで紹介した対処法でお子さんの癇癪が改善した方が数多くいらっしゃいます。
お母さん自身のケアも忘れずに。
「毎日完璧にしなければならない」と自らを追い込むのではなく、「できるときに」「できることから」チャレンジしてください。
この記事が子供の癇癪とその対応についての理解を深めるきっかけとなり、お母さんとお子さんとのよりよい関わり合いのための、お役にたてればとてもうれしく思います。
監修
おうち療育アドバイザー 浜田悦子
発達凸凹アカデミー 子どもの発達基礎講座「効果的な支援策」開発者。
”元発達支援センター指導員”で”自閉症スペクトラムの息子の母”という2つの経験を生かし、同じ悩みを持つお母様方に、家庭でできる療育アドバイスやカウンセリングを行っている。
3歳の頃から、自身の子どもに効果的な支援策を実践。一般級の中でも自分の苦手を理解し、行動できる子に。児童発達精神科のドクターからは、「3年以内に診断が外れる可能性が高い」と言われるまでに成長。
これまで2,000人以上の発達障害の子どもの指導、600人以上のママたちの相談にのってきた経験から、数多くの事例を書いたブログやメルマガが人気。
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